読書感想文「グラウンドの空(あさのあつこ)」

本を閉じて、幼稚園から、中学時代まで友達だったあの子を思い出した。
 
幼稚園の時には、泣き虫の私を助けてくれて。小学校では、私といえば彼女。とにかく仲が良くて。中学になって、学校に行けなくなった私を心配して、雨に濡れながら家に駆けつけてくれたあの子。嬉しくて、申し訳なくて。明日は行くからねなんて言えずに、黙って俯いてしまった。
 
田舎の中学校の野球部には、ピッチャーがいない。そこに転校してきたのは、すごい球を投げるピッチャー、透哉。だが彼は、不登校生だった。「諦めるの癖になったら嫌やなと思うて」諦めずに透哉を野球部に誘おうとするチームのキャッチャー、瑞希。彼の姿が、あの友達の姿に重なった。

 
 
 
透哉はそんな瑞希に応えて、マウンドに現れる。結局、中学は別室登校で過ごした。卒業させてもらえた。高校も、全日制の普通高校に合格して、進学させてもらえた。あの日に後悔はしていない。廊下が騒がしくなる休み時間に、たった1人狭い特別な教室で息を潜める中でも、自分なりに考えることもできたから。
 
でも、彼女のことは後悔している。別の教室にいるよと言う勇気も出ず、休日に当たり障りないメールのやり取りをするだけ。同じくクラスになっても、それは変わらなかった。いつしか受験に忙しくなって、連絡はしなくなった。
 
気付けば卒業していて、卒業式当日でも、彼女とは何も話さなかった。顔すら見つけられなかった。春休みになって、メールアドレス変更のメールがきた。一斉送信の、あれ。アドレスを見て、同級生の名前、顔を思い出すのが辛くて、返信はしなかった。アドレス帳に登録だけして、そのままにした。
 
彼女の進路先がわかったのは、高校に入学して、共通の友人に教えてもらったとき。1年生の5月だった。夏休みにこの本を読んで、気まぐれで、彼女にメールを送ってみた。「元気?今あの子と同じクラスでね…」一方的に近況報告をして、送りつけたメール。返信が来た時は、思わず叫びそうになった。また返信しないと。
 
そう思っているうちに、また学校が始まって、メールのことも、彼女のことも、忘れたままになっていた。気づいた時には、自分達は既に高校生ですらなくて。メールも、送らないまま。送るのに、勇気がいるようになってしまって、あきらめてしまった。
 
しょうがないじゃない。お互いに忙しいだろうし、きっと私のことなんて覚えてないだろうから。呟こうとしたところで、あの台詞を思い出す。「諦めるの癖になったら嫌やなと思うて」また、メールを送ってみようか。何を書こうか。
 
そんなことを考えられる程前向きには慣れないけれど、この本を読んでみると、どこかで彼女と繋がっていられる気がするのだ。同時に中学時の思い出も思い出して、泣きたくなることもある。本棚から取り出しづらい本の内の1冊。
 
しかし、どこかで許されている気がしてしまう勝手な自分ができる。彼女と笑った記憶を思い出す。だから、この本は苦手で、その分凄く思入れ深い1冊だ。表紙に目をやると、透哉が微笑んでいてくれるように見えた。
 
 
(10代女性)
 
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