読書感想文「静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた(筏田かつら)」

内定を取り消され絶望していた大学4年生の行成と、小学校6年生の少女マサキの淡くも切ない12歳差の恋物語である。視点はほぼマサキで語られ、幼い少女マサキが少しずつ大人の男に惹かれていく様子をありありと読み手に伝えさせてくるのだが、ボーイッシュな見た目と男の子でも女の子でも通用する名前に行成は「彼女が少年」だと完全に誤解しており、近所の男の子に懐かれた感覚でしかいない。

 

純粋な恋心をどんどんと膨らませていくマサキとそんな気も一切ない、ただの友情を築いているだけの行成の温度差は読んでいて常に切ない気持ちになる。まさにリアルな一方的片思いを読者に抱かせてくるのだ。また作中で重要な「誤解」は中盤を過ぎるまで解けないままだ。

 

 

 

それも最悪の状況で起こってしまうのだが、そもそもマサキは行成が誤解している事を知っていて遊びに行ったりするので、タイミングがあれば前もって誤解を説く手段はあったのだが、真実を言ってしまえば常識を外れた関係を行成がよしとするわけがなく、二度と会えなくなるかもしれないという恐怖が彼女をとどまらせていたのだが、よく考えれば、この気持ちは告白してフラれてしまうかもしれないという恐怖と似ており、彼女を責める訳にもいかず、モヤモヤした気持ちにさせる。

 

その為、片思いを続けるマサキの恋は何度も弊害に合うのだが、気落ちした分、倍にもなったラッキーな展開が起きてしまうので、それがまた彼女の恋の火を燃え上がらせてしまうから厄介だ。作中、風邪をひいた行成を看病するシーンがあるのだが、彼女のリアルタイムな気持ちがしっかりと込められて書かれているので、個人的にはあのシーンが盛り上がりのピークだと思っている。

 

マサキの周辺にいる人間もまた彼女の恋を(年がかなり離れているとは知らされていないので)応援し、少女の一途な気持ちはラストシーンまで続くので、二人の最後のやり取りはまた切なく響くのである。こういった恋愛小説は日ごろ読まないのだが、上巻下巻とあっても特別飽きもせずすんなりと読み進めることも出来た。

 

(20代女性)

 

 

 

 

静かの海 その切ない恋心を、月だけが見ていた 上 (宝島社文庫)
筏田 かつら
宝島社 (2018-06-06)
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