「モダンタイムス」の読書感想文
ちょっと軽いものが読みたいときにちょうどいいかなと思って手にとったのだが、軽いとは言いにくい盛りだくさんの内容だった。近未来、謎解き、バイオレンス、超能力・・・超能力て。少し先の日本という時代設定と「システム」のキーワードだけで、私としては満足だったのだけど、主人公をはじめ、登場人物のキャラがしっかりしていて、どんどんはまる。
基本的に登場人物はみんな揃いも揃って飄々としていてつかみどころがなく、それでいて人間らしくもあり、憎めないキャラ。現実でもこういう人いたらいいのに。まあ、そんなわけで登場人物が魅力的なので読み飽きることはなかった。暴力的な描写も多く(指の爪を剥ぐとかね)、主人公が勇気を試される状況が頻繁に登場するのに、会話のテンポと言葉選びが秀逸で、というか個人的に好きな感じだったので、なんども笑わされた。
それに加えて、作中に出てくる『苺畑さようなら』。ネーミングもひどいが、内容もひどい。文体に至っては村上春樹さんを彷彿させるあの感じ。難解で意味不明な描写とやり取りが繰り返される作中作に、事件の真相を潜ませる。これについては主人公の嫁の解説がないとまったく推理が及ばなかった。
それにしても、「システム」って今、どこにでもあるし、自分でも気がつかないで使ってたり、使われてたりするってことについて考えさせられた。当たり前のように暮らしている世界が、実は自分以外の人によって作られたものかもしれない。分からないことがあったら、ネットで調べる。
Wikipediaを見て、それを真実だと思うことは危険だ、なんて世の中にはなってもらいたくない。いつからこんな風になってしまったのか、少なくとも今のわたしにとっては、ネットで得られる情報がなければ答えを見つけることができない。とにかく、この暇な夏休みの一日に、ただおもしろいだけじゃない、少しだけ真面目に考えるきっかけを作ってくれるよい小説だった。
(40代女性)
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