読書感想文「死神の精度(伊坂幸太郎)」

みんなは、『死神』と聞いたらどんなイメージを持つだろう。骸骨?黒いマントを着けている?長い湾曲した鋭い斧を持ってる?この話は、死神の目線で始まり、数人の人間と関わり、その者が期日で死ぬのか、それとも寿命を全うするのかを判断していく。

 

なんだか、派遣社員のような感じ。私はそもそも『死神』というものに対して自分の中で固定されたイメージはなかったが、あまりにも想像していた死神とは違った。だからこそ、吸い込まれたのかもしれない。人間の姿をした人間に興味がないクールな死神が、一体何を見て何を感じ、生死を判断するのか。

 

 

 

このクールな死神、ただ冷たいだけならその辺にいる死神と変わらないのだが、ちょっととぼけた所があるのがまた愛らしく、読み終わる頃には私はこの死神の大ファンになっていた。できることなら是非お会いしたい。まぁ死神は人間のフリをしているから、会っても気づかないけれど。また、死神は関わっていく人間に対して無関心、無感情で比較的淡々と話は進む。まるで、端から見ているような感じで。

 

それはそれで死神の目線にしっかり立てているのかもしれない。でも、少しずつ少しずつ死神がその人間に、その周囲に興味を持っていく変化がとてもおもしろい。そして一話から六話まで全て読み終えたときには、死神が感じとるものや感情の表現が増えている、そんな気がした。

 

だって、すごいいいところに気づくのだ。人間のちょっとした表現の仕方や表情の変化、そしてその美しさに。現代を世話しなく生きる人間達は、そんな事に見向きもしない、いや、既に忘れかけている。気づいている死神は逆に人間らしいのかもしれない。おかしな話だが。それは、端から見ている気持ちの余裕なのだろうか。

 

現代の日本人に足りない物を伝えようとしている、そんな気がしてならない。必死に頑張る姿ももちろん美しいけれど、その美しさを自分自身が気づいていない人があまりにも多いのではないか。一度立ち止まり、ゆっくりと深呼吸をして辺りを見回してみることも必要である、そんな事をこの死神から教えてもらった。

 

(20代女性)

 

 

 

 

 

死神の精度 (文春文庫)

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伊坂 幸太郎
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