この本の冒頭数ページを読んで、私は息が詰まりそうだった。児童文学では特に起承転結の物語が多く、明るい話があり、暗い話があり、最後はハッピーエンドという流れが多いと思っていた。しかし、この本は物語の冒頭から重たい内容でストーリーが進んで行く。
「産まなきゃよかった」この言葉に、私はひどく考えさせられた。意味やニュアンスが違うとはいえ、私も子供のころ、母親の口からこの言葉を聞いたことがあるからだ。当時は「言われた側」としての気持ちしか味わうことがなかったし、母親のがどんな気持ちで言っているかなど考えなかったが、本で読むと、あすかがこれまで過ごして来た人生、お兄ちゃんの立場、母親としての思いなど、全てが表現されていると思った。
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児童向けの文学だが、どの年代の人が読んでも、それぞれ考えさせられる内容と感じた。物語の途中であすかは声が出なくなってしまう。それについて深く掘り下げられる事はないが、あすかがそれほどまでのストレスを感じている事は、直接的な表現でなくても伝わってくる。それが痛いほど生々しく、なんとも言えない気持ちになった。
しかし、初めから終わりまで暗く重たい話という訳でもない。ストーリーの所々には、先生やお兄ちゃん、おじいちゃんおばあちゃんのあすかを想う気持ちがちりばめられていて、それがこの話を読みやすくしているように感じる。こんな時代だからかもしれないが、この先生は本当に良い先生で、好きになってしまう。
といっても、冷静に考えれば、そこまで突飛な事をしている訳でもない。出番もそれほど多くない。現実においても良い先生とは、生徒の小さな変化に気付き、他人事とせずに、まず声を掛けてくれる、そんな先生なのかもしれない。最終的にはハッピーエンドで、「良い話」で完結しているが、私としては綺麗すぎて「物語」だなと思ってしまう。
この本を「現実」として読むか、「物語」として読むのかによって、いろいろな見方ができ考えが広がる、そんな本だった。
(20代女性)
金の星社
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感動しました。この本を読んで、悲しい気持ち、ハッピーな、気持ち部分もあったので、いい本です。是非、読んでください。