「ゴールデンスランバー」の読書感想文①
仙台で首相が爆殺される事件が発生するのだが、何故かまったく無関係な青柳という男が暗殺犯として取り上げられてしまった。明らかに濡れ衣であるのに、何故か用意周到に青柳が絶対に犯人だという情報が次々に上がってくる状況。世の中には冤罪という無実の罪が存在するが、ゴールデンスランバーのテーマは、その最大級と言えるだろう。
巨大な何者かによって嵌められてしまった青柳は、捜査関係者や民衆に追われつつも逃走をはじめるのだった。冒頭からとにかく青柳がいかに悪いやつなのか、怪しいやつなのかという情報が、マスコミによってどんどん流されていく真犯人は青柳じゃないのに、もう世間では最初から青柳が犯人であることが120%決まっているかのようなお祭り騒ぎである。
もし自分がこんな状況だったら、一体どうしているだろうと考えるが、逃走をするという選択が青柳にとっては正しかったのだろう。たびたび捜査員に捕まるピンチに陥るのであるが、不思議なことに青柳という殺人容疑者には、協力してくれる人間が次々に湧いて出て来るのだった。
首相暗殺犯が青柳ではないことを承知して助けてくれる面々は、青柳を信じる者、社会に反抗するもの、今回の事件の真相を知りたい者。そうした面々によって青柳はなんとか捜査の網をくぐり抜けて、事件の真相に迫っていく。彼らのように青柳を助けてくれる人々は、もしかして最初から犯人が青柳じゃないことを知っているのだろうかとも考えた。
青柳が逃走するときに選んだ手段は、最終的には正解だったのかもしれないが、自分だったら別の手段を選ぶだろうな、などと青柳の行動の正否を検討しながら読み進めた。どうしても気になったのは青柳を犯人に仕立て上げた謎の組織であるが、ところどころでしっぽを出して見え隠れしている。
巨大な組織の陰謀のなかに置かれつつも、最後まで逃げ通そうとする青柳。彼の姿を見ていると、逃げることを愚かしいとは絶対に思えなかった。
(30代男性)
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