読書感想文「グラスホッパー(伊坂幸太郎)」

友人の家に居候していた頃に背表紙が気になって、それから3年間ずっと頭から離れなかった。ある夏、書店にふらりと寄った際に、目に飛び込んだのが3年前に私の頭に刻み込まれた背表紙である。

 

普段あまり本や小説を読むことが無く、購入する際は慎重になるのだが、裏表紙にあった解説を掻い摘んで見てみたところ、次の瞬間迷いなく購入に踏み込んでいたのは今思えばこの小説の中身を、読み始める以前から期待していたのかもしれない。

 

当時、蒸し暑い季節もあり、ゲームや買い物など、現実逃避できる手段を探していたのだ。しかし、どれもイマイチ求めていた物と違っていた為、退屈な毎日を過ごしていた。この歳になっていうのも気まずいが、どうも冒険心を掻き立てられるものが欲しくてたまらなかったのだ。

 

 

 

そんなわけもあって、わたしは寄り道せずに久しぶりに購入した文庫本にわくわくしながら帰宅し、早速読み始めてみた。すると、序盤から私の中の好奇心はえぐりにえぐられ、心拍数が上がって止まなくなった。そもそも世界観が、私たちが感じている日常とは離れた世界の為、話の中身を理解するまで何度か読み返すのであろうかと思っていたが、そんな不安は不要であった。

 

みるみる内に伊坂幸太郎の世界に飲み込まれ、気付けば節目が分からなくなるほど次の展開が気になって眠れなくなるのだ。ただ単なるサスペンス的な話ではなく、殺し屋一人ひとりの特徴が、まるで人間の内面を極端に映しているかのようである。誰に思い入れをすることもなく、だれを恨むこともなく進められる血の匂いがするこのお話の一部始終は、読み終わるとともに一瞬の夢を見ていたかのようになった。

 

決してハッピーエンドなお話でも、バッドエンドのお話でもない。日常生活の裏側にある、人の感情の裏側のお話のように思えた。得られた経験といえば、退屈だった現実の世界が、すこし明るく感じたことだ。のめりこむほどの小説は久しぶりであったので、日常生活から少しでも離れてみたいと感じるようであれば、この本の世界を覗くのは快感に似たものを感じるはずである。

 

まるで映画を見ているような圧倒的な文字世界のアクションは、まさに「息を飲む」ものであった。
この本には続編があり、実際に映画化もされているが、どうしてこの本を読む以上に快感を味わう手段があろうか。

 

(20代女性)

 

 

 

 

 

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伊坂 幸太郎
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