「銀翼のイカロス」の読書感想文
銀行とは。私はふと、窓口に座る綺麗なお姉さんやお兄さんたちの笑顔を思い浮かべる。優しく丁寧に説明をするその姿には、本当の善意から来るものだろうか、とこの本を読んで思わざるを得なかった。銀行員の部長を務める半沢直樹こと、「半沢」は、昇格していく度に上層部の悪行を目の当たりにする。そこは、無法地帯のカネの宝庫であった。そこにいる人なら誰もがどんな人にでもカネを貸せるような、そんな場所。
政治家を相手にすれば、胡麻すりをして此方の不利益をもたらそうが利益になろうが、自分の利益しか頭にないような輩ばかり。「能ある者は爪を隠す」と言うが、銀行に務める者たちは、難関大学や専門学校、それにみあう資格を持つ、一般市民から言わせてもらうところの、所謂「エリート」だ。
そんな者たちが、上層部で会社全体の信頼の失墜をも省みず政治家との取引を行った「曾根崎」という銀行員は、どんな理由を差し置いても私から見れば「半沢」の清廉潔白さに同調して「愚か者」だと思った。「クライアント」として政治家の融資を進めていくが、我々一般市民はただの「お客様」だ。一個人としては、何ら隔てがなく格差のない人権があるはず。しかし、現実は、カネのあるの者が人を動かし、富を得る社会になっている。
これは、今の世の中でも言えることではないか。ブラック企業が求人募集に数字を詐称して雇用を稼いでいるところがあるのが現状のように、カネのあるの者が人を上手いこと口車に乗せ、自身の利益しか考えない。相手の生活など赤の他人なのだから、と切り捨てるこの世の中。「半沢」はその世論ごと一蹴する「正義」の塊でできた男だ。
「曾根崎」らが企てていた長年の不正融資を「半沢」の手で暴き、掌をひっくり返したように、床に手をつく黒幕たちの落胆の色は、私が全ての友人から理由もわからず無視をくらった時の色に酷似していた。「半沢」の不屈の精神が私にもあれば、友人から無視をくらった時でも、解決に急ぐことが出来たのかもしれない。銀行員だから、人と接し交渉を重ねるがゆえ強い。そんな簡単な答えならば、私はここまで苦労しない。
笑顔で私たちに優しく対応する銀行員の姿を再度思い浮かべる。果たして、その笑顔が本物なのか。そんなこと、決まっていたのだ。「曾根崎」らの粗行に下の者を高みの見物の如く嘲笑する笑みは見られても、心からの善意は隠されたまま。綺麗なお姉さんやお兄さんたちを「綺麗」だと思ったのは、明らかにその笑顔に癒されたからに他ならない。
仕事だとしても、一生懸命に働くその姿は、「半沢」とどこも違わない。不屈の精神は、真面目さがものを言うのだろうか、未だその答えは見つからず。ただ、私は、目標に達成するまで諦めない、と言うことだけは心に決め込んでいる。
(10代女性)
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