読書感想文「鉄の骨(池井戸潤)」

中堅ゼネコンの建設現場の作業員として働いていた富島平太。現場の仕事のまじめさと技術力を買われて営業部に配属されることになる。しかしその営業部は社内でも談合課と皮肉られていた。外回りで役所などを周り畑違いの公共事業の受注の仕事を覚える毎日。地下鉄工事の入札に真正面から挑もうとするなか談合のボスと呼ばれる業界の大物、三橋萬造と出会う。

 

池井戸潤さんの作品のなかで半沢直樹シリーズよりも私はこの鉄の骨が好きだ。談合=悪だと漠然と思っていたが物語を読み進めているうちに談合は必要悪ではないか?なら必要悪は悪ではないのか?と自分の中で次々に疑問がわいてきた。日本の2割の人が土木事業に関係する仕事をしている。その最も下流の現場で働く人の賃金や労働条件を考えた時に、公共事業の入札額を談合であらかじめ決めることによって最低ラインの金額を守る。

 

 

 

 

三橋萬造がやっている談合にそういう意味があったと知った時に談合は正義ではないかとすら思えた。また富島平太と銀行員の彼女野村萌とのストーリーや談合を調べる地検特捜部との関係など幾重にもストーリーが重なる。先の展開が気になり一気に読み進めたい反面、こんなに面白い小説の楽しみは残しておきたいと思いストーリーの山場になるであろう手前でいったん本を閉じた。それくらいハラハラするストーリー展開である。

 

まるで頭の中でドラマを見ているかのような臨場感がある小説だ。大口公共事業の落札価格を決める場面で、ここはあえてページをまたいで書いたと思われるところが本当にドキドキした。また作者池井戸潤さんの人柄がとてもよく出ている小説である。テレビの半沢直樹シリーズでは「倍返しだ!」が有名になったが、実際の小説の中ではそのような激しいニュアンスでは描かれていない。

 

どちらかというと性善説的な物の見方をされる方だと思う。会社や仲間を裏切った同僚でも「その人なりの生活や事情があるのだから」と擁護する。鉄の骨でもそのような池井戸さんの優しさが出ていた。池井戸潤さんの作品では外せない小説である。

 

(40代女性)

 

 

 

 

鉄の骨 (講談社文庫)

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