読書感想文「流星ワゴン(重松清)」

この本は人生に自暴自棄になっていた主人公が、交通事故で亡くなった父子に遭遇し、ひょんなことからワゴン車で共に旅をしていく中でこれまでの人生を考え直していく物語である。私も常々、人生をやり直せたら、あの時違う選択をしていたら今がどうなっていたのだろうかと考える時がある。

 

主人公は今の何においてもうまくいかない生活を、幼少期の父親からの対応のせいにしてみたり、人生の岐路の最の自分の選択ミスのせいにしてみたりする。その気持ちがよくわかる気がする。交通事故に遭い、成仏出来なかった父子が主人公の目の前に現れた時、きっと主人公の生きていながらも成仏できない気持ちに感化して近づいてきたのだと思う。

 

主人公の息子は、中学受験に失敗したことで家庭内暴力をふるい、主人公の妻はうだつのあがらない夫に嫌気がさして浮気をし家を出てしまう。おまけに自分自身は、会社からまさかのリストラにあって自殺を考えるほどに気持ちが落ち込んでしまう。

 

 

 

人生長く生きていればいるほど、身の回りに様々な出来事が起こり、また悪いこととは重なりがちである。私自身も、長い人生の中に悪い出来事が重なったことがある。人生を捨ててしまいたいと思ったこともある。両親の離婚、兄弟の絶縁、母の死が重なった時、心が底辺まで落ちていった。

 

その後かなりの時間がかかりながらも周囲の力でなんとか乗り越えてこられたが、もしあの時周囲の助けに恵まれなかったとしたら、この流星ワゴンの父子に出会えることを願ってやまなかったに違いない。不慮の事故で亡くなった父子の特に息子の方に感情移入してしまう。まだ小学生で命を落としてしまった子供の言葉には主人公でなくても心を揺さぶられる。

 

この子の発する言葉の重みはまるで違う。そして、夜の学校で主人公とこの少年がサッカーをしている時に、父子が本当の親子ではないと知わかる。この子の人生も短くてまた重い。最後まで読むと、空想や幻想だけではなく、現実の世界も織り交ぜたやり直しの出来ない人生のやり直しをする物語であり、 過去の人生をやり直すことが出来るというのは幸せなことなのか不幸せなことなのか、改めて考えさせられた。

 

やり直しのチャンスは与えるけれど、 現実世界への反映はさせないというこの作品から、現実の厳しさがより克明に把握できてしまうという辛さもあると感じ、心に染みいった。どういう未来に転じるかわからないけれど、この父子に会ってみたいと思わずにはいられない。

 

(40代女性)

 

 

 

 

 

流星ワゴン (講談社文庫)

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重松 清
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