「夢十夜」の読書感想文
この作品は十の夢について短編形式で書かれている。正直、最初に読んだときは理解ができなくて、何度も同じ文章を読み返したりしてどんな意味なんだろうと文字の裏側にあるものや、情景を一生懸命に理解しようと思った。
しかし、私はこの作品が「夢」を表現しているものだと改めてわかった瞬間から、無理に理解をしようと思うことをやめた。というのも、この作品の面白いところは主人公や視点が色んな人物に変わる。
それこそ私たちが普段から寝ているときに見る夢と同じ状況である。そして、もう一つ面白いのは、文章の最初に「こんな夢を見た」という書き出しで始まっていることだ。
この文章がない夢もあるけれど、この変幻自在に変わる主人公と夢を考えた時に、理解するよりも感じるままでいいのだと思ったら作品を楽しめる。
普段小説を読んでいると、小学校のころの国語の授業に答えがあったように作者の意図を考えて読んだり、時代背景がこうだったからこのとき作者はこういう表現をしたかったんだ、なんていう風に本を読んでしまう。
この作品は夢の中で時代背景が変わったり年齢が変わったりしていくので、そんな風に考える必要はないことを気づかせてくれる。あるときは神代の時代になり、ある時は船の上にいる。そのため、イマジネーションをどこまでも刺激してくれるので本当に楽しい。
もちろん、感情移入の出来る夢と出来ない夢もある。それでも、夢十夜という物語は、まるで私たちが起きていながらも読書の世界で夢を見てることが出来る。今までこういった作風のものを洋書でも見たことがなかったので本当に興味深いと思った。
私は特に船の夢が好きだ。宙吊りになってしまう部分があるが、船と言うのは多分人生だったり、人の生きていくことを表していると解釈して読んでいた。
波はそれこそ人生の波だと思うので、その波が大きければより激しい人生を生きていると考えると、この夢を見ている主人公はとても悩んだりやりたいことがあったりする人なんだろうと思う。
自分の人生がもし船として表現するならどんな表現になるのだろう。ワクワクした。そして、宙吊りにされながらも生きていくというのは生き抜いている人間を表しているようで、私はすごくパワーをもらうことが出来た。
もちろん、先ほど書いた通り、私がもし悩んでいるときに読めばなんてしんどい夢なんだろうと思うだろ。でも、夢とは自分を映すものだと思うので、一人ひとりの十の夢をその時その時の状態に合わせて楽しめれば最高だと思う。
読み返すとまた違う夢に出会えるかもしれない。もっと自分が大人になったとき、また読ませていただきたい本だと思う。
(30代女性)
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