読書感想文「空飛ぶタイヤ(池井戸潤)」

父親の跡を継ぎ、運送会社を経営する赤松徳郎が、ある日、自社のトレーラーのタイヤが脱落し近くを歩いていた母子に激突し、死傷する事故を起こしたことを知るところから始まる物語である。タイヤがはずれた事故原因は、自社の整備不良にあると、警察から一方的に決めつけられた赤松は、容疑者扱いされ事故を起こしたことで取引先からの信用を失い、取引先が離れていく中、倒産寸前の状態に追い込まれる。

 

赤松は、自社の従業員がトレーラーの定期点検はしっかり行っており落ち度はなかったことから、事故原因が整備不良ではなく、車両(メーカー側)に問題があったのではないかと考え、自社への容疑を晴らし経営を立て直すべく、社員、家族のためにトラックの販売元である大手メーカーへ戦いを挑む。本書を読んだ感想として、赤松徳郎という人物が、経営者として非常に魅力的な人物だと思った。

 

自社の従業員を家族のように思い、従業員の生活を第一に考え奔走する姿に、経営者とはかくあるべきと思った。また、大企業では、個々の能力主義、成果主義に走りがちだが、中小企業では、経営者と従業員との距離が近いことや、従業員全員が一丸となって同じ目標に向かって取り組むなど、従業員の一体感や連帯感を感じながら仕事ができるところに働き方の違いがあると思った。

 

本来の働き方としてあるべき姿は、赤松運送のような従業員、経営者が一丸となり目標を共有し、目標達成にむけ邁進する姿ではないか。現代社会では、金銭面等の処遇や待遇の良いところに転職するのが普通になっており、終身雇用は古い考えなのかもしれないが、赤松運送に見る働き方と比較すると、人間関係が希薄で、寂しい社会になっていると感じた。

 

大企業、中小企業、零細企業、それぞれの立場で様々な問題を抱えているとは思うが、大企業は、中小企業や零細企業を無くしては存在できないし、大企業に勤めている人間が偉いのではないという当たり前のことではあるが、忘れがちな問題についても改めて気づかせてくれた。

 

(30代女性)


 

 

 

 

赤松が社長を努める運送会社が死傷事故を起こした。事故内容別は自社のトラックが緩かな下り坂のカーブを走行中、突然タイヤが外れ歩道を歩いていた親子にぶつかったのだ。トラックの製造会社員は名の通った有名企業、一方赤松の会社は名前なんかないような中小企業。製造会社が出した事故調査結果は運送会社側の「整備不良」だった。

 

この結果に納得できなかい赤松は製造会社に再三の再調査を依頼する。なぜ納得できないのか?世間はただ単に自社の責任を製造元に押し付けているだけの質が悪い責任転化と解釈し徐々に信頼を失い付き合いが長い取り引き先やメインバンクまで失い少しずつ窮地に追い込まれていくが、赤松側では整備不良など起きていないのだ。

 

法定の調査項目に加え自社が独自に設定した調査項目で調査しているためだからだ。するべきことをきちんとこなし、果たすべき誠意を果たしている。たとえ言われのない濡れ衣を着せられ世間の信頼を失っても自身の正義を貫こうとする姿勢は凄い。自分なら途中で投げだし自暴自棄になっているのではないだろうか。

 

物語を読んでいる途中で何度もそう感じた。きっと世の中に正義なんかないんだと、強い者が生き残り弱い者は去っていく。たとえ自分に非がなかったとしても…。やっていることはまさにゾウ対アリのようだ。社員を信じ、自分を信じ、家族に辛い思いをさせてもいつ終わるか分からない闇のなかでも自分わ支えてくれる人を信じて期待に応える努力を重ねることは大変なことである。

 

そんな赤松は本当に強い人だなと思った。結果は製造元のリコール隠しを内部告発者が暴いたため事態は急展開することとなる。つまり製造元の社員にもこのままでは社会に淘汰されることが分かっていたから告発し悪しき組織を正したのだ。告発者もこのままではいけないと思って、それを行動に移すのはとても勇気がいる。

 

だって一歩間違えれば自分の未来がなくなるのだから。そんな危険なリスクを背負ってまで組織を良くしようと考える社員は今、世間にはどれくらいいるのだろうか?私も声を大にして悪いことは悪いと言える社会人に成長したいものだ。

 

(30代男性)


 

 

 

池井戸潤の作品は数多く読んだが、この著書を読了した後に受けた衝撃は一番大きいものだった。本書のテーマは企業倫理と人としての尊厳、葛藤が余すところなく描かれており、読後感の印象は明日に向けた活力を注入されたような感覚だった。実際に起こった事件、某自動車メーカのリコール隠しが本書のストーリーのベースにはある。

 

読み進めていくうちに様々な登場人物へ感情移入をするポイントが実に多いことに気付く。まずは事故被害に合った当事者の家族。次に事故を起こし、被害者より訴えられた運送会社の社長とその家族。社長は被害者に対する呵責の念と今後、経営に支障をきたしていくたびに背負っている会社の従業員に対する責任感。

 

被害者に対する心よりの謝罪の念を持ちながらも、会社を存続経営させるために周囲からの批判を浴びながらも事故ではなく、人災によるものであったことの確証を得るために強い意志を持ち、立ち向かっていく気持ち。そして、事故を起こした対象車種の自動車メーカの設計者。品質部門の担当者。

 

次第にリコール隠しがの事実が明らかになる中で設計者自身の良心と会社における今後の立場とを計りに掛け、人としてあるべき姿を取り戻していくその姿。人はとても弱いもので今ある立場、地位、生活を守るのは至極当然のことではあるが、それと引き換えに失ってしまう心の喪失感。

 

20数年社会人経験をしてきた自身にも当てはまることがたくさんあった。間違っていることを間違っていると素直に報告することがどれほど難しいことか。子供のころにそれは当たり前のことだと教えられてきたのに大人になって、それを完全に忘れている自分に愕然とする。

 

今、親となって、自分は不正を見つけた時に見て見ぬふりをするのか、自分の子供には不正は正すものだと大きな声で伝えられる、そんな親になっていなければいけない。本書を読みながら、様々な感情が去来しながらもそんな原点回帰な気持ちになれた作品に出逢えたことが何よりもうれしかった。

 

(40代男性)


 

 

 

今、話題の「空飛ぶタイヤ」を読んでみた。空飛ぶタイヤは上下巻セットだったのでたいへん読み応えがあった。私がこの空飛ぶタイヤを読んでみたいと思ったのは映画のCMか何かで「全てのサラリーマンに捧げる」というキャッチコピーを見たからだ。正直、映画にはあまり興味を抱かなかったのだが小説が原作と知り手に取った次第である。

 

この作品のモデルはあの三菱自動車リコール隠し事件をモチーフにしたと言われているが、ちっぽけなサラリーマン、中小企業・個人企業の泣き寝入り、大手会社の隠ぺい体質の部分がとてもリアルに描写されており、まさに、サラリーマンである自分の社会背景を見ているようで共感と同時に切なさ・やりきれなさで涙が出そうになった。

 

そんな大企業の隠ぺいに立ち向かう零細企業の運送会社社長。信念を持って大企業に立ち向かい、事故の不審な点を必死に探し協力を求め一人戦うのだが勝利が全く見えない戦いに個人的には「もうやめろよ…」と、ハラハラしながら読み進めていった。私自身、家族がおり守るべきものある立場。いくら信念を持っても彼のようにがむしゃらに巨大な大手企業に立ち向かうことはおそらく出来ないだろうと思う。

 

主人公は事故をおこした運送会社の若手社長の話だが、大手企業のサラリーマン、銀行員、大手に逆らえず泣き寝入りするしかなかった運送会社社長などの心理描写にもグッと引き込まれる。前半、あまりにも主人公が八方塞がりで「このままイヤな終わり方をしたら後味悪いな」と感じたが後半に駆け足で伏線部分を回収し、ハッピーエンドで終了する。

 

前半の苦悩が報われたが後半のストーリ展開があまりにも唐突な気も感じる。ちなみにこのモチーフは実在しているが小説とは違い、リコールは認められたが運送会社は信頼を回復できず廃業になったそうだ…正義とは何かと理不尽な憤りを感じる。最後は痛快な部分があったがサラリーマンとは何か。どうあるべきかを考えさせられる本だった。

 

(40代男性)


 

 

 

この本は、とてもスリリングな書籍になっている。冒頭から暗い雰囲気に包まれ、そのあとも、追い打ちをかけるように、ピンチが主人公にやってくる。これでもかというくらいに、打撃を受け、それでも主人公が負けずに頑張っている姿は、勇気づけられるものだ。本当に、これだけの被害にあっても、前に進んでいけるのだと思わせてくれる。

 

この書籍は、自動車事故で人が亡くなってしまうが、それが整備不良が原因だと責められるところから始まる。本当に、整備不良が原因なのだろうかと疑問に思った、主人公の社長は、色々なことを調べて行く。一方で、自動車メーカーは、その事故には不具合があったのだが、その不具合を隠してリコールしない姿勢をとっていく。

 

一時期は、週刊誌がその悪事を見つけスクープしようとしたが、自動車会社の圧力で記事が無くなってしまう。本当に、ピンチの連続が続いていく。そんな中、運送会社の社長には、さらにピンチが訪れる。今回の事故が原因で、主要取引先が取引を中断すると言ってくるのだ。本当にピンチになってしまう。

 

さらには、メイン銀行がお金を返してくれと言ってくる。そんなピンチにも少しの光明が出てくる。同じような事故にあった運送会社が仕事を回してくれたり、新しい銀行を紹介してくらたのだ。このように、ピンチの中にあっても、わずかな光明が現れるところが現実に合っているようにも感じ、とても共感ができる。

 

主人公は、何度も重なるピンチに打ちひしがれそうになりながらも必死にもがいていく。そんな感じが読んでいるこちらには伝わってくる。そして、自動車メーカーのリコール隠しの実態が分かる証拠を見つけ、警察に突きつけることになる。そして、最後いよいよ大どんでん返しがやってくる。

 

リコール隠しをしていた、自動車メーカーが障害致死の疑いで逮捕されるのだ。それまで主人公に意地悪をしていた自動車メーカーが逮捕されることで、本当にすっきりした気持ちになった。

 

(40代男性)

 

 

 

 

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池井戸 潤
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