「赤頭巾ちゃん気をつけて」の読書感想文
ストーリーは、学校群制度導入直後の都立日比谷高校を舞台にして展開する。主人公は学校群制度導入前の端境期に、受験エリートとして日比谷高校に入学した男子高校生で、受験を控えている。主人公は東大が学生運動の影響で入学試験中止をしたことに対して、大学受験自体をやめるか、それとも一年見送って東大にこだわるか、もしくは、どこでもいいから大学に行くかという選択を迫られている。
主人公は、学問と理性を愛し、誰々ちゃんがどこどこの大学に受かったと噂し合うような、近所の奥さん連中を軽蔑するような考えを持っているが、しかし、かといって主人公自身の考えも枝葉を整えてその言わんとするところを抽出すれば、彼女らの考えと選ぶところがないのではないかという不安を抱えていた。
そんな中、主人公の日常に、さまざまな波紋が示し合わせたかのように投げかけられていく。唐突に気のある素振りを見せる行きつけの医院の女医。自分の劇作が時代に必要とされていない不安を洗いざらい韜晦するインテリの友人。主人公が大切にする学問の威厳がことごとく打ち壊されていくが、最後に「そんな時代」への対処法を主人公なりに見つけ出す。
私がこの本を読んだときには、まさにこの本の主人公と同じような悩みを抱えていた。それは、勉強なんかしても結局世間(特に芸能分野やスポーツの世界、一般企業においても社内政治のようなものが渦巻く世間)では、役に立たないどころかかえってお荷物にすらなるんじゃないかという不安であり、また、しかしそれでも勉強というものが本当は価値があるのではないかとずっと信じているという、二つの不安の葛藤である。
結局、私もこの小説の主人公も、その葛藤に対して似たような結論を出している。それは、勉強は何かに打ち勝つためにやってゆくというよりもむしろ、そのようなどうしようもないような現実を再解釈して受け入れられるようにしたり、自分の心だけでも自由にしたり、また、自分だけでも自由になったことを利用して自分の知り合いだけでも何かよい影響を与えられたなら、それで勉強ということも少しはやったかいがあったんじゃないかという事である。つまり、何かを積極的に諦めることで逆に大きな成長をする、という発想を得ることである。
(30代男性)
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