読書感想文「ツナグ(辻村深月)」

私はほとんどミステリータッチの小説は読まない。怖がりであるからという単純な理由である。であるからツナグに関していえば、読む前にかなり迷った。この世で生きている者と死者を、一生に一度だけ再会させてくれる”ツナグ”といわれる使者の話であるからだ。ややミステリーの香りがしたので読まないでおこうかとも思ったが、なぜか興味が恐怖に勝り、えいとばかりに読み始めた。

 

結果的には読んで本当に良かったと思う。何人かの人がすでに亡くなった人と再会を果たすのであるが、私は一番最初に出てくるアイドルとの再会の物語が心に響いた。まず、普通の女性会社員が亡くなったアイドルに再会したいと思うところが想定外のことであった。この”ツナグ”によって生きている者が死者に会える設定をしてもらえるのは、一人の人間に一度だけ与えられたのチャンスなのである。

 

 

 

普通に考えて、このチャンスを使いたくなるのは、子供が亡くなった親に会いたくなったときや、先に亡くなった子供に親が会いたいと思ったときなどではないだろうか。親子関係でなければ、祖父母・兄弟など、とにかく私の頭で考えられるのはこの程度の深い関係性のある人同士が使うものという前提であった。なぜアイドルなのだろうか。しかも、会いたいと打診をうけた死者も断ることができるのである。

 

たった一度だけのチャンスだから、大事な人と会いたいと思うわけで、その人から打診が来るまで待って良いのだ。しかしこのアイドルは打診を受けた。読んでいて何で?ばかりが頭をめぐる。この女性会社員は、家族にも同僚にも厄介者扱いされて、以前道ばたで過呼吸になったところをこのアイドルに助けてもらったことがあった。現在もつらくて死んでもいいと思っていた。それが、アイドルとの再会を果たし、会話をするうちに生きる力が湧いたのだった。

 

女性の感想は、「アイドルってすごい。」である。読んでいるこちらも、アイドルはすごい、と思った。自然体で励まして、相手を明るくさせる力をもっているのだと実感できた。私はアイドルを何となく馬鹿にしていたのかもしれない。痛いところを突かれた感じである。小説の最後の方に、このアイドルがツナグに言った言葉は、「その子たぶん、死ぬつもりだろうから。」だと書かれている。

 

ただのファンに会うために一度だけのチャンスを使った理由は女性の自殺を食い止めようとしたためであった。私は、最後にまたアイドルはすごい、と感動した。

 

(40代女性)

 

 

 

 

 

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