読書感想文「スロウハイツの神様(辻村深月)」

主人公の環をはじめ、スロウハイツの住民がみんな魅力的だ。脚本家やイラストレータの卵、漫画家の卵など志が同じ者同士励ましたり、茶化しながら生活していてストーリー内にも出てくるがまるでトキワ荘のようである。住民の美男美女カップルには終始もやもやした感じがした。特に彼女が年下のストーカーのような彼氏のために夢を諦めて変わっていく姿が理解できなかった。環が恋愛に夢中になって自分が見えなくなっている彼女に一生懸命お説教する気持ちがものすごく理解できた。結果的には元のさやに戻りはしなかったけれど彼女が恋愛中毒から脱出できてよかった。スロウハイツのオーナー環の母親の記憶は、本人が思い出すのがとても辛いであろう重い内容だった。詐欺師で逮捕される母親を見ていた環は日本中に知ってもらうことで母親と決別することができたのだろうか。

環の記憶の中のチヨダコーキの第一印象や学生時代に会ったサンタさんとのエピソードは何とはなく読んでいたがラストを読んでなるほど…と感心した。チヨダコーキの環に対する気持ちが下巻の最後の方まで特に思わせる部分が無く、環の記憶に残っているエピソードが全てチヨダコーキが仕掛けたことだったかと驚かされた。見たいテレビ番組を環たちが見られるようにテレビを購入して駅舎に寄付したり、サンタクロースに変装してコンビニの外で勝手にケーキ販売を装って環の好きなブランドケーキをプレゼントしたり。クールで控えめな印象を終始受けていたため、この行動には驚かされた。環とチヨダコーキがお互いを深く思い合っていたなんて。そしてラスト、コーキと再開する環の場面は胸が熱くなるシーンだ。そして狩野の正体には驚かされた。住民の中では個性があまりなく漫画家の卵だったはずだったのだが、環の妹と付き合っているところで大金持ちだと表現が出てくる。そこで狩野の正体は実は…と。友情や恋愛、夢を追いかける若者たちの葛藤など日常を忙しく生活していると忘れてしまったものをふと思い出させてくれるような小説だ。

 

(40代女性)

 

 

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