読書感想文「盲目的な恋と友情(辻村深月)」

どうして女同士の友情は男との恋に勝てないのか。当たり前と言われればそれまでだが、漠然とそう思うことは少なくないと思う。この本は、盲目的な恋、およびそれに付随する盲目的な友情を描いた一冊である。誰もが羨む美貌を持ちながらも、それを自覚していない主人公が「本当の恋」を知り、熱くなり、浮かされ、堕ちていく様と、そんな主人公への執着に近い友情を持つ女友達の話である。盲目的な恋愛…要は報われないような、波乱万丈な恋愛というのは様々な本で描かれてきた内容だと思うが、私はこの「盲目的な友情」に着目していきたい。冴えない容姿と、そのコンプレックスが膨らみすぎた友人は、美しくもその自覚がない主人公へ対して信心に近い感情を抱く。彼女は「彼女の一番の友人」であることに執着するあまり、彼女の心をコントロールしようとし、相談されるのも、「親友」であるのも私一人ではないといけない、という強迫観念のような気持ちを持ちながら彼女と触れ合う。その狂気的な友人の描写はもちろんだか、それ以上に、「友人の友情というものへの執着」とは全く釣り合わない友情の感覚をもつ主人公の描写にとてつもない切なさを覚えた。

主人公にとって(というよりかは当たり前の感覚はこちら側なのかもしれないが、)「親友」は一人ではなく、様々な友達らにその時々で向いている話をしたり、相談をしたりしていて、もちろんその時は100%の感情で接しているものの、そこに執着や優劣は見られない。また、友情以外にも「盲目的な恋」に溺れる彼女は親友の思い描く「友情」には遠く及ばない、もっとうねるように熱い感情を男に向け続けているのである。また、彼女のもう一人の親友として描かれる女性も、柔軟で執着のないキャラクターとして描かれており、「親友」であることに執着し続ける友人の姿の痛々しさがより浮き彫りになっているのである。前述した通り、「どうして女同士の友情は男との恋に勝てないのか」というのは、女性であれば感じることが少なくないのではと思う。愚痴という名の睦言を聞かされたかと思えば、熱に浮かされていることにも気付かず、本気で苦しみ、悲しみ涙を流す彼女にどれだけ優しい言葉をかけても、彼女の愛する男からの優しい言葉には一生勝つことができないのである。読了後、果たしてこれで良かったのだろうか、と思うと同時に、女同士の友情の不安定さと、溺れていく恋の酷さに思わず唇を噛み締めてしまう。

 

(20代女性)

 

 

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