「祈りの幕が下りる時」の読書感想文①
「新参者」シリーズは、テレビドラマの頃に好きになり、ドラマや映画は見ていたんですが、原作を読むのはこれが初めてでした。今まで加賀の母親については、あまり疑問に感じませんでした。しかし、今回のメインは明らかに加賀の母親だったと思います。
もちろん、作品の内容のベースにあったのは殺人事件です。犯人である浅居博美の父親の忠雄が、加賀の母親である、百合子と関係があったというのも、なんだか運命を感じさせます。まるで、百合子が自分の本当の気持ちを加賀に伝えたかったみたいな感じに見えたんです。
加賀は、自分を置いて出ていった母親を、本当はどういう風に思って生きてきたのかと思いました。加賀の、どこか掴み所がない飄々とした言動には、幼い頃からの寂しさや孤独などを隠す為なのだろうかと思いました。
父親のせいで母親は出ていってしまったと思い続けていた加賀。しかし、百合子の遺骨を前に全てを自分のせいにした父親から、母親が鬱病だったと聞かされるシーンは、とてもショックでした。
本当に辛かったのは、加賀ではなく、母親の百合子の方だったんですね。物語の最後の方で、博美から手紙を渡された加賀は、初めて母親を感じたのかもしれません。
鬱病に蝕まれていく自分が、息子に危害を与えるのではないかと危惧して家を出た百合子は、どれだけ加賀に会いたかったのでしょう。
自分のせいで父親と仲違いはしていないかと悩む姿からは、彼女がどれだけ加賀を慈しんでいたのかが分かります。そして、剣道雑誌を見た百合子はどんな想いで成長した息子を見ていたのでしょう。そこには、側で成長を見られなかった寂しさもあったのだと思います。
ですが、晴れ晴れとした笑顔を見せた百合子は、きっと自分の行動が間違ってはいなかったと思ったと思います。どんなに離れていても、やはり母親は母親なんですね。
殺人事件の解決よりも、私には加賀と母親の心の交流の方が気になりました。母親の愛は、どこまでも深いのだと感じました。
(40代女性)
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