「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」の読書感想文
弟、たくとは始め何か問題がある子供のように描かれている。たくみは、家族以外の人を認識していない、いくみの事でさえ、あんなに可愛がってくれているのに「一緒なら外に出れる人」くらいに思っている。そしてちっとも喋らない。
姉、いくみは、まだ小学生なのに変に気をつかう癖がある。言葉を選び、発している様は気の毒にさえ思う。子供らしくその日の出来事さえ伸び伸び話すことさえしない。
たくとも、いくみも母親のせいでこんな事になっている。母親の奈緒は四六時中、夫の事を夫の浮気の事で頭がいっぱいになっている。そのおかげで(せい?)姉弟の仲は良い。逆にこの母親だからこそ、たくとは問題のある子供からちょっと発達の遅い子供程度に成長していくのだ。何故なら、教育熱心な母親ならたくとのこんな様子は心配でたまらないはず、母親、奈緒にも心配している描写はあるが、サラッと描かれている。
普通の母親なら心配ゆえに過干渉になるはずだ。しかし、奈緒は、こんなに心配な息子たくとをまだ小学生のいくみに面倒みさせている。昭和の農家の家庭ならまだしも。
いくみは、たくとの事が大好きだ。虫の気持ちがわかるたくと、大人からみたら不可思議なたくとの行動を心から尊重している。たくとの様な子は自尊心が低くなってしまう場合が多いが、いくみのおかげでたくとの自尊心はきっと高く保たれている。
たくとは心で会話できる霊園の児島さんや幼稚園のお友達シンイチくんとの関わりの中でちょっと発達の遅い子供から普通の子供へと成長していく。たくとの世界観をひらがなから漢字混じりの文章へと読書が気がつかないくらい自然な感じで変化している。その変化イコールたくとの成長なのである。
心配なのはいくみの方だ。夫婦仲の悪さを感じ、親に気を使い、弟の世話をする。いくみは世話をする事で自分の存在を確認するタイプなのだ。かえるの葉っぱに執着した事からそれがわかる。否定はしているがいくみはかえるを食べてしまった。
奈緒が夫に執着するのと似ている。こんなに良い子のいくみが将来、毒親になるのが目にみえる。その時はたくとがいくみの事を支えて欲しいと願う。
(40代女性)
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