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読書感想文「きらきらひかる(江國香織)」

「きらきらひかる」の読書感想文①

読み始めると、なんとなく気だるい雰囲気がした。アル中の妻にホモの夫、脛に傷持つ者同士である。お互いに恋人がいる。なぜ結婚したのだろう?読み始めてすぐに興味を持った。生きるため?それぞれの家族のため?お互いに人には言えない問題を抱えている、笑子と睦月。結婚とはどんな人でもタイミングというものがあるのだろうか?
 
睦月は産婦人科の開業医の跡取り息子だ。息子がホモであることは両親ともに知っている。一人っ子なので期待され、母親には体外受精を薦められている。笑子と睦月はお見合いで出会い、お互いの恋人の存在を認め合い結婚した。しかし結婚直前に笑子の方は、「君はホンポーなのが魅力だが、フツーじゃない」との理由で分かれを告げられてしまった。
 
この話の中の笑子は常に無邪気で会話が直球である。それはアル中だからではなく、繊細すぎるからであろうか?発言が子供の用だ。しかし真をついている様な気もする。笑子はお見合いの時に、自分に無関心でいてくれる相手を選んだようだが、睦月だったら自分を受け止めてくれる期待がどこかにあったのではないかと思う。
 
睦月の恋人とも仲良くなる笑子。睦月の恋人は、「おれは男が好きなんじゃない、睦月が好きなんだ」という。笑子も同じだ。笑子の驚きの発言がある。旦那の精子とその恋人の精子をあらかじめ試験管で混ぜて人口受精することは可能か?と本気で考えた発言だ。奇妙な三人だが、皆が本当を生きているような気がした。
 
人を好きになることはいけないことではない。この3人ならうまくやっていけると思った。彼らは他人にどう言われても気にしないであろう。それは3人がお互いのことを大切に思っているからだ。なにか小学校時代のピュアな男女関係にも似ている。毎日仲良く遊ぶ子供達のようだ。
 
お互いの家族、友人から子供を作るように勧められる二人がなんだか可哀想に思った。どうして多くの人は常識というものに自信があるのだろう?皆と同じは安心なのか?人の幸せの価値観を決めつけて押し付けてはいけないと思う。
 
笑子が、「どうしてこのままでいいじゃいけないのかしら。このままでこんなに自然なのに」という言葉が印象に残った。本当に自然に人を愛し、尊重し合う三人の様子がうらやましく思えた。この本を読んで勇気づけられる人が沢山出てきてほしいと思う。
 
(40代女性)

「きらきらひかる」の読書感想文②

「こんな夫婦の形もありだろう。」それが読み終わった瞬間の気持ちだった。そして数週間経った今、自分と夫との関係を主人公である夫婦に重ね合わせ、私が求めている夫婦関係…もしかしたら「夫婦」という枠を超えた人間関係というのがここに描かれていたのではないかと思い始めている。
 
少し前に読んだ江國香織さんのエッセイが妙に心地よく感じたので、小説を読んでみたくて何となく選んだのがこの本だった。「きらきらひかる」というタイトルと本の装丁から受ける印象が良くて借りてみることにしたが、某サイトの内容紹介を読む限り全く興味は湧かなかった。
 
それは登場人物であるセックスレス夫婦や同性愛者に対する日頃の自分の無関心さの表れだったかも知れない。いやしかし、それでも読み始めたのだから、潜在的に意識しているテーマを含む内容だとどこかで認識していたのだろう。まず、アルコール依存症である妻と同性愛者の夫がお見合いで一緒になったという件だけで今どきの内容だなぁと思った。
 
しかし既に発表から25年も経つ作品である。今ほど性的マイノリティに対してオープンでなかった時に書かれたことは驚きだった。それだけ昔からある珍しくない題材とも言えよう。私には夫がいて夫婦という関係を現在進行形で保っているのだが、結婚して3年経っても「これが夫婦というものだろうか」と自分たちの関係を省みることがよくある。
 
それは若い頃から思い描いてきた結婚生活、夫婦関係と現実が大きくかけ離れているからであろう。ストーリーの中で夫を真に大切に思う二人…妻と恋人(男性)。一夫一婦制の一般的な感覚で言えば、これらのふたりは恋敵に当たる。しかし、夫婦という枠が無ければ、ふたりは同じ人を愛する仲間であり、三人がお互いに良いバランスを保った愛情関を持つことに違和感は無い。
 
そもそも夫婦というのは社会における取り決めを交わした関係でしかないのだから、この三人を夫婦という概念抜きにひとつのユニットとして捉えると物凄く理想的な存在に見えてくる。私がこのような感覚を持ったのには理由がある。それは自分の夫と夫の親友、そして自分の三人の関係が登場人物とダブるからである。私が夫と出会ったのは6年前。
 
夫と親友は40年来の付き合い。単に親友と言っても、私が自分の親友との間には決して見出すことの出来ない深く強い絆があり、結婚した当初は彼らの関係に軽く焼きもちを焼いたほどだ。しかし、ふたりの強い信頼関係と友としての愛情を目の当たりにして、「私が大切に思う夫を慕ってくれる存在」、「私の大切な夫が慕う存在」である「彼」はすなわち「私にとってかけがえの無い存在」であると気付き始めている。
 
今この時期にこの本に縁があったことも何か私に必要な気付きが与えられたとしか思えない。これからは彼らふたりの関係が永く良いものであるよう私を交えた三人関係を築けたらいいなと本気で考えるようになった。夫婦はふたりの関係だけうまく行くよう考えていても成り立たないのではないだろうか。
 
そして、同様に夫婦や家族という単位だけの幸せを追求しても人類全体の幸福には至らないのではないだろうか。恋愛結婚で子供まで儲けて離婚に至る夫婦のなんと多いことか。周囲で夫婦関係の崩壊する様、また、感情を抑え込んで仮面夫婦として添い遂げようとする姿を見ていると、大きな矛盾を感じずにはいられない。
 
多くの人は、「対ヒト」に求めるものと「対配偶者」に求めるものが違いすぎるために苦しいのではないだろうか。我々は「配偶者」である前に「ヒト」である。大きな期待を抱かずに読み始めた作品であったが、この先も思い返しながら生きて行くであろう印象深い本となった。
 
そして、「これが夫婦というものだろうか」と思いながら積み重ねてきた自分と夫の関係が「いわゆる夫婦という関係」よりも「人間対人間」という望ましい傾向を持っている事に気付き、安堵した。
 
(40代女性)

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