「太宰治全集〈1〉」の読書感想文
「苦悩」の時期に書かれたこの作品は私が初めて太宰治に触れた作品でした。この作品は短編集ですが、その中で一番最初に読んだのが、最後の「狂言の神」です。それまで太宰治の作品に一度も触れなかった私は勝手に「どうせ暗くてしんどいんでしょ」と決めつけていました。
しかし、この「狂言の神」は最後にどこかホッとする安心感というのか、温かさのようなものを感じました。これを読んだ後に私の太宰治への印象が大きく変わって、やはり何事にも先入観っていうものはよくないものだな、と思いました。
また、「彼は昔の彼ならず」という作品にはとても納得させられました。この話は、自身又はその周りの人間は普通とは違う、人とは違うんだと思いながらも実はそうではなく、皆同じ普通の人間でしかないのだ。
ということを言いたかった作品だと思うのですが、これは私にも当てはまることだったので図星をつかれたようでとてもビックリしました。
私は出来るだけ何事も効率よく物事を進めたくて思考を巡らせ行動する努力をしているのですが、動きが鈍かったりする人は決まって私に「頭の回転が早いから」「私とは出来が違うから」と言います。
しかし、私は効率よく回すための努力をしているつもりです。それを「私とは違うから」という理由で片付けられるのはとても嫌な気持ちがします。
皆普通の人間なのです。誰かが特別ではないのです。特別と思い込みたい人もいるみたいですが普通の人間であると自覚することはとても大事だと思いました。そして、この「彼は昔の彼ならず」という話はそのようなことをズバリと言い当てていると感じました。
もう一つ衝撃を受けた作品は「陰火」の中の「紙の鶴」です。これは少し笑えるのですが、処女だと思っていた妻が実は処女ではなかったと知った男がそれについて苦悩する話です。ここで思ったのは、男性にとって「処女」というものはそんなに重要なものなのか、ということです。
性の捉え方は人それぞれだと思いますが、ここまで苦悩するほどのことなのか、と少し笑えました。異性差というものを感じることができた作品です。
ここで述べた作品の他にも面白い作品が沢山詰まっている「太宰治全集1」は私にとって驚きや笑い、又はどきっとさせるような様々な感情を起こさせる印象深い図書の一つになりました。
(10代女性)
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