読書感想文「ワーキング・ホリデー(坂木司)」

『和菓子のアン』のように身近な職業物語であり、この作品も心温まるストーリー仕立てだから、『家政婦は見た』ではないけれど、覗き見気分で読めてとても面白かった。私はホストクラブに全く縁がないが、宅急便には日頃からお世話になっている。それなのに意外と知らない事がたくさんあって、職業ならではの豆知識が増えたようでとても興味深かった。
 
なんといってもハチさん宅配便営業所での荷物の仕分けの様子などは、ヤマト便にて取材をしたというだけあって、その描写はとても臨場感があった。確かにお酒や化粧品・果物などの生ものの様な壊れやすい物や、ゴルフバックなどの重い荷物などをつい依頼してしまう。すると、仕分けや配達とただでさえ大変な作業なのに、荷物の扱い方や積み方など細やかな心配りをしながらもスピードアップを心がけている。どんな業界にもその道のプロはやっぱりどこにでも存在している事に、改めて気付いた。

 
 
この物語では、老若男女、年齢問わず様々な優しさ溢れる愛らしいキャラクターが存在する。その中でもホストクラブオーナーのオカマキャラのジャスミンの立ち振る舞いがカッコよかった。ホストの仕事中に理由を理解していながら、それでもお客様を殴った事で大和を解雇する。普通ならそこで放り出してもおかしくないのに、ちゃんと次の仕事まで世話をしてくれる男気、それとも母親的存在を感じてしまった。
 
さらに、ハチさん便の強面だけど器の大きいボスの存在もいい。喧嘩っ早いのに人情に厚い大和をまるで父親の様に営業所の仲間と共に温かく見守り、時に叱る役割をしっかり果たしている。そのおかげで、主人公の大和とおばさん化している進少年とのひと夏休みの交流は、少しずつだが歩み寄り親子らしくなっていった。
 
この物語を通して、やっぱり人は一人では生きていけないものなのだと改めて気付かされた。大和と進少年とは、全く違う生き方をしてきたのだから簡単に歩み寄れるはずはない。それでも夏休みが終わる頃には、次の冬休みの再会が楽しみになる程の関係を築く事が周りの仲間の助けによって出来上がっていた。
 
私の周りにもいざという時にここまで力を貸してくれる人はいるだろうかと考えさせられた。人と人の繋がりは、とても大切なものだと強く感じた物語であった。
 
(40代女性)
 
 
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