「斜陽」の読書感想文①
この作品には四人のメインキャラクターが出てくるのだが私はどのキャラクターも自分の正義を貫いていて素晴らしいと思った。見ていて苦しくなる部分もあるのだが、それぞれがそれぞれに愛を持ち、生き抜いている姿はやはりまぶしいという印象を受ける。
太宰治の作品は人間の正義を上手く表現していると思う。もちろん、賛成できない部分や、感情移入できないキャラクターも多い。しかし、人間の不条理さや汚さもしっかりと描いてくれるので私は個人的には読んだあとは気持ちが良いのである。
「斜陽」も母親には全く感情移入することができなかった。しかし、この本はきっと読み手の環境やタイミングが違えばまた新しい感情や景色を発見することの出来る作品ではないだろうかと思った。
戦うという表現を使っているが、まさに生きることは戦うことだと思う。決して良いことばかりではない。また、平等に幸せがあるのかもわからない世の中である。弟の直治はお金は持っているが、そのお金は自分で得たお金ではなく、もがき続けて庶民への憧れを忘れないでいる。
そして、遺書には「私は、貴族だ」と書いている。一見すると、庶民から見たらとても幸せである直治は結局はかごの中の鳥と変わらなかったのだ。
また、落ちぶれても最後まで貴族であり続ける母親は死ぬ瞬間まで貴族であり続ける。そう考えると人は皆自分の求めているフィールドに行けるかもわからない。
自分がどう生きるか、どう行動するかが重要なのだと改めて思わせてくれた。とても力をくれた本だと思った。そして、子供を授かったかず子は子供を産むことを決意して、庶民として生きていくわけである。私ならここまで冒険する人生を選ぶことはしないだろう。
しかし、自分の意志を大切にして、守るものがないにも関わらず生きて行こうとするかず子からは何か学ぶものがあると感じた。もちろん、自殺をしてしまった直治もそうである。
庶民になりたかったからこそ、貴族をやめるために自殺という形をとってしまったが自分の意志を全うしたのだ。
人生を全うする人間はこの世に何人いるのかわからない。でも、幸せかどうかは自分自身が決めるものである。そう考えるとここに出てくるキャラクターはすべて幸せなのではと思う。また、明日からの自分に何かを与えてくれたそんな気がする。
(30代女性)
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