「ノルウェイの森」の読書感想文①
この物語は、親しいものに先立たれ、絶望しながらも生きることを選んだ主人公を描いている。また、学生運動の時代が生き生きと描かれていて、60年代のジャズ喫茶などの描写がリアルに感じられる。読む前の印象は、とにかく暗く重く感傷的なストーリーという先入観たっぷりで、正直な話、あまり積極的に読み進めたいという感じではなかったのだが、手に取って数ページで読む手が止まらなくなった。
37歳の主人公は、ドイツの空港で飛行機が着陸して機内でしばらく待っている間に耳にした、ビートルズの名曲「ノルウェーの森」のカバー曲を耳にして、19歳から20歳の頃に自分とその周囲に起こった出来事の回想を始める。主人公の回想は、東京で私立大学の学生をしていて、学生寮で生活をしていた時期から始まる。
そして少しずつ神戸での高校時代に起きたショッキングな出来事を思い出してゆく。主人公は平凡で飄々とした性格の中に、どこか言いしれない痛みを抱えている。彼は高校時代の親友の自死を目の当たりにして、「死は生の対極としてではなく、その一部として存在している。」と感じている。
主人公は、大切な人を自殺で亡くし、あとに残されたのであった。高校時代の唯一の親友を亡くし、数年後にその友人の恋人をも亡くすのである。その友人の恋人とは、後に主人公の恋人でもあったのだ。いろいろなことを考えさせられる。私は、この物語のショッキングなラストに泣かされ、ストーリーの全体像を未だに脳内で咀嚼、吸収しているという段階である。
この物語はなかなか重たい内容ではあるが、何とも言えないカタルシスを感じることができた。親しいものに先立たれ、絶望しながらも生きることを選んだ主人公に共感せざるを得ない。
(40代男性)
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