読書感想文「国盗り物語(司馬遼太郎)」

国盗り物語は前半が斉藤道三、後半は織田信長が主人公の歴史小説である。斉藤道三は美濃のまむしと呼ばれ、一介の浪人から一代で美濃の国主にまで上り詰めた、下克上の典型の人物である。別名のまむしのイメージから冷酷非情で手段を選ばない人物に思える。しかし、それでは人はついてこないだろう。小説では、確かに非情な手段は使うものの、それは自分のできることの中で最善の手段を講じた結果に思う。戦国時代なので人を殺し、裏切ることはよくあることで手段の一つにすぎないのだろう。現代の学説では、道三の国盗りは道三一人ではなく、父親との親子二代で成し遂げられたものらしい。ただ、この小説が執筆された1960年代はそこまで研究が進んでいなかったこともあり、一代記のようになっている。戦国時代は中世以来の秩序が崩れた時代である。道三は当初は僧侶であったが、商人となり、その後武士となる。商人を経ることで当時経済力をつけつつあった商人、白拍子などの武士、農民以外の身分の人間とも交流を深める。これが国盗りに大いに役立つことになった。現代でも、古い秩序が戦国時代よりも早いペースで崩れつつある。それはIT革命であったり、AIの台頭であったりと様々だが、それらに対峙する際に道三の生き方はとても参考になる。そんな道三に影響を受けたのが、後半の主人公の織田信長、そしてもう一人の主人公というべき明智光秀である。織田信長は秩序の破壊者というイメージであり、比叡山の焼き討ちや長篠の戦いの三段撃ちなどが有名である。今の研究では、比叡山の焼き討ちも全山消失というほどではないようだし、三段撃ちも少々無理があるそうだが、小説の中の信長ならやれそうである。道三が若き日の信長を見て、自分の息子たちはこの信長にひれ伏すだろうと予言したという。織田信長はいろいろな小説やドラマで描かれているが、この国盗り物語の信長がひとつの典型だと思われる。今の学説や研究では、必ずしも小説のとおりではないかもしれない。しかし執筆当時の学説に基づき縦横に活躍する登場人物を見ていると、この小説は真実やフィクションを超えて楽しめる。

(40代男性)

 

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