「芋虫」の読書感想文
この作品を読むきっかけとなったのは、2010年公開の「キャタピラー」を見る機会がこのGW期間中にあったので、映画を見る前に読んでしまおうと思い、本作が短編小説のためすぐに手に取りやすく、読み進めたのが始まりである。
文章なんかよりとっつきやすいであろう漫画化などもされているこの作品をなぜ、小説で読もうとしてのかというと、江戸川乱歩のもつ文章の魔力…魅力を感じたからです。あとは、映画を見てしまう前に「この描写は漫画のほうがすきだな…」なんてことにならないように、文章をあえて選んだのもポイントです。
個人的な話はさておき、感想の方にうつりたいと思います。時代背景は、戦後。主人公はある夫婦。夫は戦争で傷を負って帰って来るも、四肢は無く視覚と触覚のみの状態。妻はそんな夫をいじめるのを悦びとしていた。妻が夫を介護をする姿、人としての陰険な部分であったり、時には優しさ、江戸川乱歩が選んだ言葉の美しさなどが感じられ何とも言えない気持ちになりました。
ストーリーも進み、そんな時子も遂に、夫の残された感覚のうちのひとつである「視力」を奪ってしまいます。夫の瞳があまりにも純粋すぎたからです。悶え苦しむ夫の姿を見て、時子は「ユルシテ」と夫の身体に指で書いて謝罪をします。そして、自分のした行為を後悔したのでした。その後、視力を失った夫は、「ユルス」と走り書きのメモを残し、姿を消します。
妻の時子は、その時の夫の姿を色々連想し呆然としてしまうのですが、そうはいってられないと、鷲尾少将(夫婦に部屋を貸していた人物)と手分けして近所を捜索にあたるのでした。視力をも奪われた夫は、手足の無い姿で地面を這うように外出していった姿を想像しただけで、私は心が締め付けられるような感覚になりました。
健全な身体ではない上に視力まで失っているのですから、想当だったでしょう。やがて、二人は夫の姿を見つけるのですが、すぐには駆け寄ることはしなかったんです。地を這う夫の姿が衝撃的過ぎて…。最後は、題名通り「芋虫」に似た姿の夫の描写と夫が移動中に井戸に転落し、命を落とす描写で締めくくられているのですが、生々しさよりも切なさを私は感じました。
この作品は、読む人を選ぶと思いますが、是非一度、手にとってもらいたい作品です。時子の人間味に、リアリティーを非常に感じますし、個人的に介護に、関係している方々には読んでいただきたいと思います。何故なら、悪い方向ではなく一度は介護の「疲れ」や「孤独」から来るネガティブな発想を胸に抱いているのではないかと思ったからです。きっと、はっとさせられると思います。
(20代女性)
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