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読書感想文「白昼夢(江戸川乱歩)」

「白昼夢」の読書感想文

この作品は16ページ程の短編で読むのにかかる時間はゆっくり読んでもさほどの時間はかからない。この作品は16ページ程の短編で読むのにかかる時間はゆっくり読んでもさほどの時間はかからない。しかし、その短さとは裏腹に無知の愚かさや集団心理の恐ろしさがハッキリと垣間見える作品と言えるだろう。
 
創作の背景には江戸川乱歩が医学者で推理作家の小酒井不木より死蝋(何らかの理由で死体が腐敗菌の繁殖を免れてその内部の脂肪が変性して死体全体が蝋又はチーズ状になったもの。ミイラとは異なり乾燥した環境ではなく潤湿かつ低温の環境で生成されるもの)の作り方を聞いた事と、ショーウィンドーに蝋細工の人体模型を展示してチェーン展開していた薬局を結びつけて創作したと言われている。
 
話の中に登場する薬屋の主人は殺人の告白の演説の中で死蝋の作り方を述べている。しかし、この薬屋の主人が街頭で殺人の告白の演説をしていても語り部たる“私”を除外した聴衆は誰一人としてその殺人の告白の演説をある種の宣伝活動や作り話としてしか認識せず。 
 
ケースの中の死蝋を本物の死体だと言われてもなお、創作の笑い話のように捉えていただけでなく、聴衆に混ざっていた警察官ですらその告白の演説を作り話として笑いとばしていた。この薬屋の主人の演説で画かれているのは、集団になると人間が集団心理で自己の判断力を失う様子を短い文章でハッキリと表現している点で優れていると言えるだろう。
 
また、聴衆に混ざっていた警察官ですらケースの中の死蝋を本物の死体だと認識していない一方で医学書から知識を得ていた語り部の“私”は死蝋の作り方を知っていて、見せられたガラス箱の中のそれに真実の人間の皮膚が黒ずんで見えたり、作り物ではない証拠に全身に産毛が生えている事から薬屋の主人の告白が真実であると見抜いている。
 
集団心理に無知が合わさると、白昼堂々と死体を大衆の目の前で晒して殺人の告白の演説をしていても誰もそれが本当の話だと信じないと言う人間の愚かさの中で、誰も気づかない真実に気づく“私”と言う構図は現代社会でも様々な場所で見受けられるのではないだろうか?この作品は短編でありながらそういった事が認識できるものだと考えられる。
 
(20代男性)

 

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