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読書感想文「剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む (永井義男)」

「武者修行」という言葉からどのようなものがイメージされるだろうか。私が持っていたイメージは、「故郷を離れ、己の剣一本を頼りに各地で道場破り紛いを繰り返す命がけの荒行」と、言ったところであった。しかしながら、この『剣術修行の旅日記』を読み終えた時、そのイメージは180度ひっくり返ってしまった。
 
この本は、佐賀藩士の牟田文之助が幕末に武者修行で日本全国を廻ったときに記した日記を整理したものである。彼の旅は日本全国に及ぶのだが、各地で観光名所に立ち寄り、大いに旅を楽しんでいる。
 
肝心の武者修行も、別に審判の前で誇りをかけた決闘を行う、などという大業なものではなく、各地の道場の稽古に参加させて貰う程度が主流で、夜は宿で大宴会という感じだったそうだ。詰まる所、武者修行というものは現代におけるスポーツサークルの合宿と大差の無いものであったようだ。
 
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また、武者修行に関連する形で当時の時代背景も解説されているので、実に勉強になる特に、私が衝撃を受けた点は以下の2点である。1つ目は、堅苦しい武家言葉の存在意義である。当時は方言ごとの差異が激しく、異なる地方の出身者は会話が成立しなかったそうだ。
 
「拙者、○○でござる」などという実に話しにくい言葉を時代劇で見る機会は多々あったが、あれは一つの共通語としての役割を担っていたようである。2つ目は、武士は武術の修行をしないということである。私は、武士は皆、剣術をはじめとする武術に長けているというイメージをもっていたが、幕府が公的な武術の修練機関を設置したのが黒船来航の後とのことである。
 
つまり、それまではまったく武術の修行をしない武士もいた、むしろ、その方が多数派だったようである。一方、諸藩は財政難を迎えた藩ほど人材育成の手段として武術を奨励し、それが武者修行の活性化に繋がったとのことである。私は、この本を通じて、時代劇や時代小説を通じて作られていたイメージが壊され、生々しい当時を生きた人間の姿や社会の様子を学び、感じ取ることができた。
 
(30代男性)
 
 
 

剣術修行の旅日記 佐賀藩・葉隠武士の「諸国廻歴日録」を読む (朝日選書)
永井義男
朝日新聞出版 (2013-08-09)
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