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読書感想文「人間椅子(江戸川乱歩)」

読書感想文「人間椅子(江戸川乱歩)」

「人間椅子」の読書感想文①

人間椅子。このタイトルのインパクトはなかなかのものだと思う。タイトルを見た時、空気椅子をしている人に、座るという映像をイメージしてしまった。しかし、この作品の内容はそんなコミカルなイメージからは程遠かった。内容も一度読んだら忘れられないものだった。ある女流作家に手紙が届くのだが、その手紙の内容がとても不気味なのだ。
 
最後に同一人物から別の手紙が届き、主人公の作家の感想は何もないまま終わっている。読後感がまた独特で、結末の文章をそのまま受け取れば、一瞬ほっとするのだがよくよく考えると、背筋がぞわっとするような恐怖を覚える。恐怖というと幽霊的なものを思い浮かべるかもしれないが、得体のしれない不気味さというか、気持ち悪さだ。
 
当時はまだなかった言葉だが、今でいうところのストーカーの怖さである。ねっとりとした恋愛感情が、自分のあずかり知らないところでまとわりついていて、後からそれを知らされるというのが、ベトベトした感じで本当に気持ち悪いのだ。大学時代に初めて読んだのだが、自分が主人公と同じ性別の女であることと一人暮らしをしていたこともあり、すっかり主人公に感情移入してしまった。
 
しばらくは怖くて、家に帰る度ベッドのクッションを押してみたり、クローゼットを開けるようになった。この人間椅子を読み終わった時の気持ちの悪さ、不気味さは現実に起こるのではないかと思わせるところにあると思う。流石に作中と同じ出来事がそっくり起こることはあり得ないと思うのだが、それでもいつ、我が身に降りかかってもおかしくないと思える恐怖がある。
 
最後に「創作ですよ」と明言してあり、一瞬安心する。しかし、結末を知ってもう一度作品を読み返すと「創作ですよ」では片付けきれない矛盾が見つかる。自分の身に起こるかもしれないという気持ちを差し引いても、ものすごく不気味な作品だった。不気味だ、気持ち悪い、恐怖だと思ったが、同時にこんなことを考えられるって人間ってすごいなあと思った作品でもある。
 
(30代女性)

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