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読書感想文「人間椅子(江戸川乱歩)」

「人間椅子」の読書感想文①

人間椅子。このタイトルのインパクトはなかなかのものだと思う。タイトルを見た時、空気椅子をしている人に、座るという映像をイメージしてしまった。しかし、この作品の内容はそんなコミカルなイメージからは程遠かった。内容も一度読んだら忘れられないものだった。ある女流作家に手紙が届くのだが、その手紙の内容がとても不気味なのだ。
 
最後に同一人物から別の手紙が届き、主人公の作家の感想は何もないまま終わっている。読後感がまた独特で、結末の文章をそのまま受け取れば、一瞬ほっとするのだがよくよく考えると、背筋がぞわっとするような恐怖を覚える。恐怖というと幽霊的なものを思い浮かべるかもしれないが、得体のしれない不気味さというか、気持ち悪さだ。
 
当時はまだなかった言葉だが、今でいうところのストーカーの怖さである。ねっとりとした恋愛感情が、自分のあずかり知らないところでまとわりついていて、後からそれを知らされるというのが、ベトベトした感じで本当に気持ち悪いのだ。大学時代に初めて読んだのだが、自分が主人公と同じ性別の女であることと一人暮らしをしていたこともあり、すっかり主人公に感情移入してしまった。
 
しばらくは怖くて、家に帰る度ベッドのクッションを押してみたり、クローゼットを開けるようになった。この人間椅子を読み終わった時の気持ちの悪さ、不気味さは現実に起こるのではないかと思わせるところにあると思う。流石に作中と同じ出来事がそっくり起こることはあり得ないと思うのだが、それでもいつ、我が身に降りかかってもおかしくないと思える恐怖がある。
 
最後に「創作ですよ」と明言してあり、一瞬安心する。しかし、結末を知ってもう一度作品を読み返すと「創作ですよ」では片付けきれない矛盾が見つかる。自分の身に起こるかもしれないという気持ちを差し引いても、ものすごく不気味な作品だった。不気味だ、気持ち悪い、恐怖だと思ったが、同時にこんなことを考えられるって人間ってすごいなあと思った作品でもある。
 
(30代女性)

「人間椅子」の読書感想文②

この小説は気持ち悪い話だなと思いながら読んでいると、ラストにあっさりその気分から解放されるので、結果非常に気持ちの良い作品だと思った。私にとっては、最後のオチがあるのとないのでは、随分この作品の印象が違っていた事だろう。2通目の手紙の、歯切れの良いビジネスライクな文面が印象的だ。
 
佳子に突然届く得体の知れない男からの手紙、これは何かありそうだと思ったがまさかこんな風に話が展開するとは思わなかった。更に気味悪くも椅子に入っている男の謙虚な手紙の文面からぬくもりを感じてしまい、どうも嫌いになれない。そして男がこの様な形でしか、愛情表現する事しか出来ないのが切ない。
 
しかしこの様な形でしか感じ取れない未知なる世界がある事は、魅力的でもある。そしてそれを無意識に受け入れてしまっている自分が、やはり気持ち悪いと思うのだろう。これは男性が読むか女性読むかによっても、印象が異なってくるのではないかと思う。私は作家夫人の方に感情移入して読み進めたが、男性は椅子に入っている男に感情移入している人も多い気がする。
 
また肉体で感じあう恋愛というのが存在するのだなあと思った。奇妙ではあるがこの感覚は、実際に椅子に入った者にしか分からない事なのだろう。椅子の中の細部の仕組みの描写は生々しく、飲料や食料も周到に準備されていて、椅子の中で生活してやるという気合が凄い。そこで何日も生活するというのはまるで何処かに旅行にでも行くどころではない、未体験ゾーンだと思う。
 
前半の椅子に入った男がホテルに何か月も滞在する話も、興味深く惹きつける語り方であった。この様な事ではあるが、人間やろうと思えば案外何でも出来るものなのだなと妙に納得した。確かにこれは犯罪であるし、小説の中の小説の話なのだが、この発想を良い方向に使う事も出来る筈だと思う。奇妙ではあるが、勇気をもらった。
 
手紙の内容を佳子が読んでいる内は、佳子自身の描写が全く無いのも逆にダークな想像力が働いて良いと思う。おかげでしらけずに一気に読む事が出来た。
 
(40代女性)

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