読書感想文「金閣寺(三島由紀夫)」

この小説には吃音と内飜足というコンプレックスをそれぞれ抱えた二人の青年が登場する。「青春時代が夢なんて後からほのぼの思うもの。青春時代の真ん中は胸に棘刺すことばかり」という歌の歌詞があるようによほど家庭や容姿に恵まれない限りは誰しも大なり小なり青春期の葛藤はあるものだ。

 

容姿に対するコンプレックスは男子は女子ほどないものだと思っていたが、この小説を読んでびっくりした。女子にとっても初体験は結構なテーマではあるが、男子、こと大きなコンプレックスを抱いている男子にとって童貞喪失というものがこれほどに大きなイベントであろうとは知る由もなかった。

 

 

 

コンプレックスを抱えた主人公が、金閣寺という建造物に美を感じ、果てはそれを焼きたいと思うに至るまでの心理描写が微細に描かれているが、読んでみてもそこまで到達する心理は理解しがたかった。

 

また、主人公を預かっている金閣寺の老師が、色町で遊んでいるところなどは、現代にもよくあるような業の深い者ほど仏門に入りたがったり、品行方正にしていなければならない職業の人ほど煩悩が多いとストレスがたまって凡人よりもっと欲情が抑えられなったりすることと同じだなと思いました。

 

また、この小説は昭和25年年7月2日の京都の鹿苑寺・金閣が寺僧の放火によって焼失した事件を素材として、6年後の昭和31年に書かれたものであるが、何か死ぬ前に世間をあっといわせることをして自殺して死のうという主人公の心理が、後の作者の割腹自殺を示唆していて、この作品を書いているときから、この主人公に自分の将来像や深層心理を投影しているように思えた。

 

美が人を暗い気持ちにさせるというコンプレックスを抱えた若者独自の考えの箇所を読んだとき、青春時代に葛藤の多かった自分も当時この本を読んでいれば、自分だけではない、昔から男女の区別なくこのような悩みは存在するのだと孤独感から少し開放されたかもと思い、読書の習慣が全くなかった青春期の自分を恨めしく思った。

 

(50代女性)

 

 

 

金閣寺

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