読書感想文「82年生まれ、キム・ジヨン(チョ・ナムジュ)」

韓国で2016年に発表され、女性の共感を呼んで大ヒットとなった作品の日本語訳版を読んだ。主人公キム・ジヨンというごく普通の女性のこれまでの人生の中で、彼女が感じ体感した女性ということの不公平感や差別が淡々と綴られている。私自身が同じ82年生まれということもあり、以前から非常に興味を持っていた。

 

ちなみに主人公の名であるジヨンというのは、実際に82年出生の韓国人女児に名づけられた中で最も多かった名前なのだそう。表紙には顔のない女性のイラストが描かれており、これはあなた自身にも当てはまる、あなたの物語なのだと訴えかけられているような印象を抱いた。 キムジヨンは祖母と両親、そして姉、弟と暮らす6人家族の次女である。

 

ジヨンの母親は、姉とジヨン2人の女の子をそれぞれ妊娠した時、祖母や夫に謝罪をした。男の子を妊娠しなかったからである。さらに、3人目を妊娠した時、お腹の子が女の子であるとわかると堕胎してしまう。性別がわかる前、夫に「また女の子だったらどうしよう」と不安を投げかける妻に、夫は背を向け「縁起でもないことを言うな」と言い放つ。

 

 

 

日本の30数年前はどうだったのだろうか。私には4つ離れた姉がいるが男兄弟はいない。男の子を待望していたという話も聞いた記憶はない。しかし男の子はイコール跡継ぎとして大事にされ、男の子を産んだ嫁は偉いという風潮が未だに日本にも存在するのは事実だと思う。

 

ジヨンに弟が生まれ成長すると、祖母と母は当たり前のようにジヨンの父、そしてジヨンの弟の順にご飯をよそい、ジヨンと姉は同じ部屋で生活したが弟には1人部屋が与えられた。不公平だと思いながらも、それが当たり前だった。 私の小学校時代、出席名簿はまず男子からでその後に女子が続き、身体検査やスポーツテストなど様々な事柄はこの男子からの名簿順で始まり、女子から何かが始まる事は一度もなかった。

 

この時はこれが当たり前のことだと思っていたし何も疑問に感じることなどなかった。 ジヨンは就職活動の面接の際にも女性であることに不公平感を感じていた。就職してからも、接待で受けるセクハラ、同期の男性よりも給料が大幅に低かったことを知る事実、そして妊娠、出産すると子育て(いわゆるワンオペになってしまう)と仕事の両立が難しく、退職してしまう。

 

女性だけが犠牲になり何かを諦めなければならない現実は、今日の日本においても共通する部分が多く理解できた。 この本は、差別や不公平感を描いているものの、露骨に女性の地位を強調したり被害者的に訴えたりしている印象はない。しかし、「私もそうだった」「これは私の話ではないか」と感じた女性や、そんな女性達を応援したいと願う多くの人々によって強い共感と支持を得たのではないかと考える。

 

ちょうど昨年頃から始まったMetoo運動の影響も強いと思う。そして、日本はどうだろうか。最近の東京医科大学の入試差別問題が象徴するように、残念ながら韓国に負けず劣らずの男尊女卑社会であることは事実である。優秀な女性ほど「差別」を感じてきたのではないだろうか。

 

自分のことを優秀だと思った事は一度もないけれど、そんな私もジヨンと同じような経験があり、似た感情を抱いたことが何度もある。 大それた事はしないし、するつもりもないが、女性である事を誇りに思い正しく生きていきたい。キムジヨンは様々な事を教えてくれたし、さらに多くの人にこの物語を知って欲しいと思っている。

 

(30代女性)

 

 

 

 

 

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