読書感想文「春の雪(三島由紀夫)」

映画化もされた悲恋と運命に抗う者達の物語である。大正時代の生活や建物や風習なども色々と興味深い。主人公は清顕という、侯爵家の御曹司。そしてヒロインは聡子という由緒正しい伯爵家の令嬢だ。二人は幼なじみで、聡子は昔から一途に清顕を慕っているが彼は若さや複雑なプライドが邪魔をして天の邪鬼な行動ばかりとってしまう。

 

やがて聡子には天皇家の皇子との縁談が持ち上がる。聡子は清顕に止めて欲しいと願うが清顕は拒絶し続け、とうとう縁談は本決まりに。決して手の届かない存在になってから初めて清顕は聡子への愛情を認めた。正直遅いよと、憤慨してしまうが。そして、人目を忍ぶ禁断の逢い引きが始まる。もしバレれば二人だけではなく、それぞれの家族や一族まで破滅が待っている。

 

 

 

そう分かっていても止められず、逢瀬を重ねる二人。「いずれ終わりが来る」と感じているからこそ今がより尊く感じるのかもしれない。そんな中、やがて来る破滅を冷静に覚悟している聡子と現実を直視することを避け続けるお子様な清顕。聡子のほうが年上なだけではなく精神年齢もずっと上なのだろう。また二人を窘めたり、そうかと思えば手助けする聡子の老女中・蓼科。

 

二人の恋を黙って見守る、清顕の親友・本田。「成り上がり者」の清顕の父に、内心腹立たしい思いをしている聡子の父。聡子の縁談を自分の目的に利用しようとするやり手な清顕の父。皆の思惑が絡まり、やがて聡子が清顕の子を妊娠したことが波紋を広げていく。由緒正しい伯爵家の当主でありながら自分では何も決められない、不甲斐ない聡子の父親。

 

大正モダンの中で没落していく、彼の滑稽さと無様さが特に印象に残った。活動写真や芸者を招いた宴会、美しい振り袖に馬車。目に浮かぶ情景は、どこか懐かしいセピア色だ。本当は全四冊なのだが、この巻だけでも独立した話としてちゃんと楽しめる。「輪廻転生」が裏のテーマなので清顕の来世に想いを馳せてしまった。

 

(30代女性)

 

 

 

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