「愛してよろしいですか?」の読書感想文
本作は30を過ぎた仕事に生きる主人公のすみれが、ひょんな事から大学生と恋におちてしまい彼の一挙一動に翻弄されてしまう姿を巧妙に描き出したものである。初版は1982年であるが、「働く女性」が感じる事は世代を超えてほとんど変わらないという事を実感させられた。
その上女性が30を過ぎても仕事をしているなんてありえない!という風潮の時代であったのだから、当時の女性たちはなお苦労を強いられていた事と思う。「ハイ・ミス」という言葉で売れ残りであるように揶揄されていた時代の事である。さて、その12歳年下の男性のワタルであるが、彼はお金もちでも顔がかっこいいわけでも無いが仕事に疲れ切ったすみれに対してなによりもその世代の女性が求めているようなあたたかい言葉をかけて、すみれを柔らかく包むのであった。
また、彼の若さゆえの無神経さや図々しさも、年齢を重ねてた上で読むと非常に可愛らしく見えてくる。最初はこんな若い男の子が自分の事を気に入ってくれるなんて、暇つぶしにしか思われていないのではないか、と疑念を抱くすみれの気持ちも非常に理解できるものであり、「ハイ・ミス」世代は共感しかないが、それを溶かすようなワタルの包容力。
これがまた恋におちてしまったら年齢なんて関係なく、女性は皆女学生のように女の子に戻る事ができるのだという気持ちにさせてくれる。とにかくすみれが年上の女性の仮面を押しつけられて生きてきていたものが、だんだんと少女の姿を現してゆく姿が本当に可愛らしく、人が恋におちるとはこういう事なのだという気持ちを呼び起こしてくれる。
一種の甘い童話のようであり、でも現実に生きている主人公たち。仕事や大人でいる事に疲れ切ってしまった時に一時の安らぎを与えてくれた。自分の心は10代と変わらないつもりで生きてきたのに、気が付けばオバサンと呼ばれてしまう年齢までは残酷なまでに早くやってきてしまう。そんな思いを感じる女性も、男性も深く共感できるものであろう。
(30代女性)
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