読書感想文「おちくぼ姫(田辺聖子)」

「おちくぼ姫」は、日本のシンデレラストーリーだ。西洋のシンデレラと似ているけど、ちょっと違う。とても個性が強い。それは、作者である田辺聖子氏のおちくぼ姫への思い入れの強さでもある。人柄が穏やかで、才気あふれ、縫い物が上手。気配り上手で、やさしく、嫉妬するようなこともない。浮ついたことも考えず、卑屈にならない。その上、衣装は貧しくみすぼらしくても、若くて美人。

 

おちくぼ姫は、日本女性のあこがれる全てを兼ね備えた女性だと思う。貧しく、継母のいじわるに落ち込みそうな気持ちを抱えつつ、自分に黙って付き従ってくれる女房の阿漕への心配りは、いつも忘れない。自分に自信が持てなくて、気持ちが沈みがちな時、私は「おちくぼ姫」を読むようにしている。もう、彼女のように、若くはなれないけど、その人柄の良さは、今でも見習わなくては、と思うことが多い。

 

 

 

おちくぼ姫だって、時々、一人で物思いにふけりたいと思うことがある。でも、そんな寂しい表情をした姫君をおそば付きの女房として幼い時から寄り添って来た阿漕は見ていられない。一人ぼっちではお寂しかろう、と気遣ってついお傍を離れられない気持ちになる。そんな時、おちくぼ姫は「部屋に好きなお方が来てるんでしょ。待たせてはいけないわ」とさりげなく阿漕を気遣う。

 

決して「私を一人にしてちょうだい」、なんて要求めかした言い方はしないのだ。そんなおちくぼ姫のやさしさや気配りがあってこそ、この人ただ一人を愛すると誓う右近の少将が現れるのだ。決して、たまたま運が良かったから玉の輿に乗ったというわけではないと「おちくぼ姫」は問わず語りの中に語りかけてくる。おちくぼ姫はやさしいけど無理な背伸びもしない女性である。

 

現代で言うところの、ちょっと天然なところもある。だからこそ女が魅かれる女でもあるのだ。古典作品としての「おちくぼ姫」は、継母への復讐劇がメインのような作品である。平安時代の日本人は、恨みつらみへの報復をこれでもかと繰り返すストーリー展開がお好きだったらしい。この物語は、現代感覚にあまりそぐわない復讐劇のシーンを大幅に割愛して、おちくぼ姫のシンデレラぶりを前面に押し出している。おちくぼ姫の異母妹、四の君の天然ぶりも一興である。

 

(50代女性)

 

 

 

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