読書感想文「けむたい後輩(柚木麻子)」

「後輩」の真実子は女子大の1回生。偶然、ひとつ上に少女の頃に愛読した詩集の著者である「先輩」に出会い、憧れ、一途に想っている。この真実子ちゃんは可愛いん。天真爛漫だけれど、真面目、集中力がいいので、なにをやっても上達が早く、かわりにどじっ娘なところがあり、病弱であるため守ってあげたくなる。

可憐な美少女は偉ぶるところがまったくなく、なりふりかまわず先輩を追いかける。対する先輩は小悪魔というか、性悪娘。一度だけ親のコネで14歳で詩集をだした一発屋で、孤高をきどりすぎのスノッブで男に頼る事しかできない。なにひとつ成し遂げたことがないので、男の価値が自分の価値と勘違いしているが、結局いつも振られる。

どうして、真実子が先輩を憧れ、慕うようになるのか不思議でしょうがない。真実子ちゃんは生来の人好きの良さからキャンパスいちの人気者になる。対して先輩はどんどんとやさぐれていくが、真実子ちゃんの思いは一途だ。約束をぶっちされ、異国でとりのこされてもへこたれない。

物語が進むにつれ真実子ちゃんの「ひとであれ、物であれ、よいところを見つけるのが抜群に上手い」気性に先輩の心はほだされていくが・・・育ちがよく温厚な真実子ちゃんは本作の2場面で怒る。一度目のセリフ「物を作る人に男も女もないでしょう!女だと応援してくれないんですか?そんなこと私聞いてないもん!」

二度目は大激怒だ。一章でひよこのようだった真実子ちゃんはやがて、大人の真実子さんへなれるのか?タイトルで少し損をしているかもしれない、スカッと痛快に読めるエンターテインメントだ。女性は強いな。俺も負けていられないな。勝ち負けなんて関係なく、勝負は面白い。真実子のように鳥になりたい、道を模索したい。

 

(40代男性)

 


 

 

 

私自身女子大に通っていたということもあり、本の中に登場する栞子や真美子の存在に共感しつつ、いっきに読み進めてしまった本である。生意気で自分に酔ったまま成長できない栞子と、子供のように無邪気で無垢な真美子がそれぞれ互いに関わりながら、大人の女性になるまでの過程が書かれている。その過程で起こるさまざな出来事に対する2人の極端までの対照的な描写が何度読み返しても面白い。

確かに話の仲の栞子の怠惰っぷりには終始イライラしてしまうが、自分自身にもそんなだらしのない部分がないとは言い切れない為、恥ずかしいような向き合いたくない部分に改めて気づかされるのである。イライラする人物像なのに自分にもどこか重なるところがあるような気がするという感じは、女性同士の話ならではという感じで親近感さえもある。

真美子にしたって子供っぽく鈍臭いのに、どうしてか大切な部分だけはしっかりと吸収し自分の糧にしてしまう。身近な人物に重ねてもやっぱりちゃっかりと成長していく存在はいる。そう考えると栞子は怠けているからだけではなく、その辺のちゃっかりとか容量が足りないのではないかと思いだしてしまい、少しだけ可哀想にさえなってしまうのである。

ラストの真美子の成長ぶりにはスッキリし、かっこいい女性に成長してくれたと感心もするが、栞子が心配になり気にしてしまう自分もいた。日々の出来事をどのように受け止めて、行動していくかという小さな積み重ねの結果が、大きな違いとなってラストにいっきに現れるのが面白くもあり複雑でもある。

きっと作者はそんな問いかけもしてくれているのではないか。栞子と真美子の対照的な2人の話を読むうちに自分はどうなのかと考えさせられた。容姿や性格、就職先や付き合う男まで、ランクづけをしてしまう女の世界だからこそ、他人からの評価だけでなく自分自身を成長させていくことの大切さに改めて気づかされた本である。日々の忙しさの中で、こんなことを忘れないために時には読み返したいと思える本である。

 

(20代女性)

 

 

 

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