「ボックス!」の読書感想文①
純粋に誰かのために頑張れる、という貴重な経験は青春時代特有のものなのだろうか。自分のためにではなく、誰かのために、というのは、大人には出来ないことかもしれない。この本の主人公の一人、鏑矢は、才能があるがゆえにあぐらをかいてしまっていて、それなりの努力しかせず、そして簡単に挫折。
最初は、こんな奴は「ダメなやつ」と思わずにはいられない。しかしその後、数々の試合を経験して真に成長していく。その姿に感動する。「負けを認める」ということを受け入れたことから始まり、親友木樽のサブに徹して、だからこそ才能が磨かれていく。
ラストの鬼気迫る勝利で、鏑矢は一見わがままで自己中心的に見えていたが、誰より、人のために頑張れる人間だったのだとわかる。大人になればなるほど、こんなふうに純粋に人のために頑張れることは無くなっていくような気がする。
よく、背負うものが「自分(だけ)」ではなく「誰か」の方が強いと言われるが、大人になってしまえば多少なりとも立場とか義務とか、責任とかが含まれてしまう気がする。ある意味、計算したり、アタマで理解して行っている。または、心のどこかで、その行動に対して評価や報酬や求めてしまうような。
鏑矢はそうではなく、全く純粋に行っている。それは高校生という青春時代だからか。純粋さの裏付けが友情ということが、本当に美しい。その結果として、自分自身が大きく成長する。大化けするほどに。その成長が与えてくれたであろうものが本当に貴重だからこそ、最終的に鏑矢が無冠の帝王になることにも、微笑んでしまう。
鏑矢が成長していく過程を見ていくうちに、自分が忘れてしまったものや、あえて手放してしまったものを見せつけられているようで、心苦しい。年を重ねていけば、逆に小さな人間になっていくような気さえする。大人になった今からでも、こんなふうな行動ができたら、また「青春」を経験できるかな。
それによってどんな感情が得られるのかなと、つい考えてしまい、そこがまさに既に計算していて「青春」じゃないと、はっとしてしまった。もう本当に大人になってしまったのかもしれない。いや、まだこれからだと思っている。
(40代女性)
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