読書感想文「ボックス!(百田尚樹)」

純粋に誰かのために頑張れる、という貴重な経験は青春時代特有のものなのだろうか。自分のためにではなく、誰かのために、というのは、大人には出来ないことかもしれない。この本の主人公の一人、鏑矢は、才能があるがゆえにあぐらをかいてしまっていて、それなりの努力しかせず、そして簡単に挫折。
 
最初は、こんな奴は「ダメなやつ」と思わずにはいられない。しかしその後、数々の試合を経験して真に成長していく。その姿に感動する。「負けを認める」ということを受け入れたことから始まり、親友木樽のサブに徹して、だからこそ才能が磨かれていく。
 
ラストの鬼気迫る勝利で、鏑矢は一見わがままで自己中心的に見えていたが、誰より、人のために頑張れる人間だったのだとわかる。大人になればなるほど、こんなふうに純粋に人のために頑張れることは無くなっていくような気がする。
 
よく、背負うものが「自分(だけ)」ではなく「誰か」の方が強いと言われるが、大人になってしまえば多少なりとも立場とか義務とか、責任とかが含まれてしまう気がする。ある意味、計算したり、アタマで理解して行っている。または、心のどこかで、その行動に対して評価や報酬や求めてしまうような。
 
鏑矢はそうではなく、全く純粋に行っている。それは高校生という青春時代だからか。純粋さの裏付けが友情ということが、本当に美しい。その結果として、自分自身が大きく成長する。大化けするほどに。その成長が与えてくれたであろうものが本当に貴重だからこそ、最終的に鏑矢が無冠の帝王になることにも、微笑んでしまう。
 
鏑矢が成長していく過程を見ていくうちに、自分が忘れてしまったものや、あえて手放してしまったものを見せつけられているようで、心苦しい。年を重ねていけば、逆に小さな人間になっていくような気さえする。大人になった今からでも、こんなふうな行動ができたら、また「青春」を経験できるかな。
 
それによってどんな感情が得られるのかなと、つい考えてしまい、そこがまさに既に計算していて「青春」じゃないと、はっとしてしまった。もう本当に大人になってしまったのかもしれない。いや、まだこれからだと思っている。
 
(40代女性)


 

 
 
 
私がBOXという本を始めて読んだのは中学生のとき。当時の私は本が好きで毎日図書館に通っていた。好きな本を見つけてはすぐに借り返してはまた読むの繰り返し。しかし、内容に関して印象を受ける本はなかった。そんなある日見つけた本がBOXだ。
 
最初この本を見たときに非常にインパクトのある本であるという印象を受けた。この本はボクシングを題材に、天才である鏑矢とボクシング初心者の木樽の二人にスポットを当て二人の成長、友情、葛藤を描いた本である。この本を読むにあたり始めはボクシングについてはまったくの興味もなかった。
 
しかし、この本を読み進めていくにつれてボクシングの会場の臨場感、リングに立つ選手の心の声、相手をパンチで打つ爽快感が真に迫るものを感じた。また本の途中で選手のスランプについてのシーンがある。全国大会に出場して全国の最強の敵に敗れた鏑矢がしばらく試合で勝てなくなるシーンだ。
 
勝てない鏑矢の陰で努力して別の階級で勝ち続ける木樽をそばで見ている鏑矢のボクシングへの迷いに心を苦しめられる印象を受けた。またとても感動する点として、影で努力した結果全国で戦える選手にまで成長した木樽と天才と呼ばれ一度は挫折したがまた立ち上がり練習を続ける鏑矢が同じ階級で激突することに。
 
親友でありライバルの二人が死力を振り絞り戦うシーンは文章の中であるにもかかわらず、そのシーンが想像でき、ライバルの大切さを学んだ点である。今の日本のスポーツ界というのはオリンピックに向けて着実に活性化の道を歩んでいる。オリンピックまでのストーリーの名の下に選手たちには多種多様、十人十色のストーリーがある。
 
このボクシングの話も同様であり、勝ち続けるためには練習が必要であるが、練習以外にも仲間の支えや恩師の存在。時には身近にいるライバルがいるからチャンピオンになれる。敗者がいるからチャンピオンになれるということを教えてくれる本だと私は思う。500ページの中にこめられた熱い思いを感じ取り読み終えた後にはとてもすがすがしい気持ちになった。
 
(20代男性)
 
 
 
 

ボックス!(上) (講談社文庫)
百田 尚樹
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