読書感想文「風が強く吹いている(三浦しをん)」

私はとにかく箱根駅伝が好きだ。特に陸上をやっていたわけでもないし、ジョギングだってこの先もすることがなさそうだ。だけど、正月には必ず箱根駅伝のテレビ中継を観る。1月、2日と3日は半日テレビの前に座っている。かくいう私も昔は、正月になると必ず箱根駅伝をテレビで観ている両親に対し、何時間もただ走っている姿を見ているのが何が面白いのだろうか、と思っていた。それが面白いのだ。ただ走っているのを見るのが面白いのだ。

 

そうだとわかったのは大人になったからだろうか。10人中、陸上経験者が3人のみで、ほぼ素人の集団で箱根を目指す物語である。主人公は、その全員がそれぞれ持つ何かの要素を「駅伝に向いている」と考え、渋るメンバーを説得しトレーニングを始めるのだ。しかし、素人集団で駅伝に勝つなんてことは、私のような素人が考えても絶対不可能なことくらいはわかる。おそらく現実には無理なんじゃないかと思う。だけど、小説だと言ってしまえばそれまでだが、そんなことはどうでもいいと思わせてくれる。

 

箱根に出場するには、ただ予選会に出ればいいのではなく、それまでに出場資格を得るための記録会などがあり、彼らはひとつひとつそれをクリアしていく。もちろんメンバーの中のいざこざや、どうやったって思ったような結果がでない者もいるし、他の学校の嫌がらせあり、主人公も足に古傷を抱えているし、さまざまな困難が立ちはだかる。でも結局は皆で力を合わせて乗り越えていくのだ。そして彼らの姿に動かされた周囲の協力も得て本戦の日を迎える。

 

正直、結果も、出来過ぎだろうと思う。でも、それもどうでもいいと思いながら読んでいた。逆にここまで来て、はしごを外さないでくれと。とにかく予選会ぐらいからずっと読みながら泣いていた。でも、清々しい涙なのだ。走ることが好き、たったそれだけでこんなに真面目に一つのことに打ち込めるって素晴らしい。やっぱり若いって素晴らしい。私はもうおばさんになってしまったけれど、娘には若い時は何でもいいから無心に打ち込めるものを見つけなさいと、この本で教えたいと思った。

 

(50代女性)


 

 

 

 

「走る」ということに焦点を置いて見渡してみると、街中には意外とランナーが多いことに気づいた。リュックを背負って通勤途中に走るサラリーマンの男性、お洒落なスポーツウエアで颯爽と走る女性、ゆっくりと、走っているのか歩いているのかわからないような速度で走る老人など、本当に老若男女、様々な人が走っている。そんなに走ることって楽しいのだろうか?と思っていたときに、この本に出会った。

 

読み終わった後は、走ることがとても素晴らしいことのように感じて、とりあえず走り出したくて仕方なくなった。弱小の大学陸上競技部が、主人公の走が仲間に入ったことをきっかけに箱根駅伝を本格的に目指すという、現実的にはありえないような設定で、ストーリーとしてはありきたりなものではあったけれど、駅伝を走る一人一人のキャラクターが丁寧に描かれていて、それぞれの気持ちに共感しながら一気に読んでしまった。

 

とくに箱根駅伝を走っているときの疾走感の表現が逸品で、身震いするほどだった。「走、おまえはずいぶん、さびしい場所にいるんだね。風の音がうるさいほどに耳もとで鳴り、あらゆる景色が一瞬で過ぎ去っていく。もう二度と走りやめたくないと思うほど心地いいけれど、たった一人でしか味わうことのない世界に。」箱根駅伝メンバーのユキが坂を下っているときの情景の一文。

 

苦しい、辛いが繰り返されるとわかっているのに走りはじめる理由、もっと速く走りたいと願う理由が、わたしにも少しわかった気がした。「リズムに乗っていると感じるのは錯覚で、本当はとんでもなく遅いペースで走ってるんじゃないか。」正月に駅伝を見ていたら「山の神」と呼ばれている選手が走っていた。同じリズムをきざみ、走ることなんて何でもないことのように、すいすいとすごいスピードで駆け抜ける。

 

時間の流れがそこだけゆっくりと流れているようで、どこまでも走っていけそうで羨ましいな、と思ったことを思い出した。走がランニング・ハイになったときの描写も、ランニング・ハイになったことなんてないのに、自分にも体感できそうなほどイメージできて、文字を読んでいるのにまるで動画再生を見ているみたいな不思議な感覚だった。走のようにはいかなくとも、わたしも気持ちよく走ってみたい、走るのが好きだ、と言ってみたいと強く思った。

 

(20代女性)


 

 

 

この本に出会ったのは私が大学1年生になりたての頃。大学寮で同室だった同級生が絶賛する愛読書で、半ば強引に手渡された一冊だった。その頃の私は生まれてはじめて親元を離れ、狭い寮部屋の中に暮らし始めたばかり。自由に外を出歩く事もできないまま時間を持て余していた。正直、本を読む気分ではなかったが、小さな建てつけベッドに転がってダラダラとページをめくり始めたのを覚えている。

 

その表紙はパッと見ると日本の妖怪ものの小説のようなタッチでぼやっとした絵が描かれていた。よく見ると少年が走り行く姿だった。少年の格好からして陸上部の話だろうか、と推察しつつ、最初のページを開いた。物語の入りは主人公である大学生2人の出会いから。日常の中に自然と「走る」ことがある文章が並ぶ。しかも主人公の1人の名は「走」とかいて「かける」と読む。分かりやすかった。

 

冒頭はもう1人の主人公、大学四年生「ハイジ」目線で書かれていたが、すぐに上京してきたばかりの新入生、走の目線に切り替わった。読み手も走の目線でどんどん状況把握ができていくため読みやすい。予想通り、大学の陸上部が箱根駅伝を目指す話であった。走と同じ新入生だった当時の私には、走がとても羨ましく思えた。彼は上京し、ハイジに出会い、走る力を見込まれ、無名大学が箱根駅伝を目指すという無謀なプロジェクトに巻き込まれてしまった。

 

が、仲間や居場所を手に入れることができた。もちろん、仲間との絆は徐々にできていくのだが…その頃の私は、自分の居場所を見つけたくてもがいていた。家を離れて初めて感じた不安や孤独にのまれていた。一方の走は、直向きな努力と「走る」事への真っ直ぐすぎる気持ちで、仲間とぶつかりながらもどんどん成長をしていった。ハイジに助けてもらいながらも、周りの人を動かしていく。箱根の山に近づいていく。

 

何もせずに内にこもっていた私には、彼がとても眩しかった。揺さぶられる思いで物語を読み進めた。彼らが襷を繋ぎ、ハイジの言った「頂点」をそれぞれに掴んだ頃。最後のページをめくり終えた私はさぞ爽快な顔をしていただろう。雨が上がり、雲の間から陽が差してきた時の喜びに近い感情が胸に込み上げ、大きく伸びをした事を覚えている。あっという間に読んでしまった。彼らは「走る」ことで自分の殻を破った。私には何があるだろう。自分でそれを探さなくてはならない。そんな衝動に駆られた。まさに今ここに風が強く吹いている、と背中を押してくれた物語だった。

 

(20代女性)


 

 

 

これを初めて読んだ時、私はランニングにはまっていた。今は足を痛めて走れないが、それでも時々思い出したように読み直す。それほど好きな本だ。この本は映画にもなったが、映画は時間の制約があるのか、ストーリーを追うだけの作りになっている。それだけでも、充分面白いのだが、本にはストーリーに加えて、主人公の少年「走(かける)」青年の精神的な成長も描いている。

 

そこがとても興味深い。こうやって、男の子は成長してゆくんだとなんか嬉しくなってしまう。私は府女子的なところがあって、若い男の子の成長物語は大好きなのだ。たった10人しかいないチームが箱根駅伝に出場し、10位以内に入るなんて、ランニングをする人なら、嫌しない人だって絶対ありえない話だとわかっている。わかっているけれど、読み進めていくうちに、もしかしたら、そんなことも可能なのではないかと思えてくる。

 

幼いころから運動が不得意で、運動する喜びを味わったことがなかった私が、夫の勧めで走り始めた。走り始めてわかったことは、ランニングは運動が苦手でもそれなりのその人なりの目標をたてて、それをクリアしてゆくことができるスポーツだという事だ。例えば同じフルマラソンに出場しても、金メダルが目標の人もいれば、サブスリー(3時間以内のゴール)サブフォー、そして私のように制限時間以内のゴールなど、目標は様々だ。

 

そしてその目標を達成したらそれなりの喜びが得られるということだ。本の中で、走君の先輩のハイジが「マラソン程才能より努力の割合が大きいスポーツはない」というシーンがあるが、その通りだ。だから、この10人の挑戦に自分の「制限時間内のゴール」という目標を照らし合わせて読むことが出来るのだ。漫画ばかり読んで、最初は1キロも走れなかった、「王子」君が嫌嫌ながら練習させられて、最後はとうとう箱根を走ることになるのは、私に本当に勇気を与えてくれた。

 

フルを目指して練習中何度もこの本を読み、自分をふるい立たせた。ランだけではない。例えばダイエットなど、こつこつ努力をしなくてはいけない課題に直面した時もこの本を読むと、「がんばろう」という気になる。目標に向かって努力することを後押ししてくれる、私の大切な一冊である。

 

(50代女性)


 

 

 

 

この物語は、箱根駅伝を目指している大学寮「竹青荘」に住む若者達のお話しである。清瀬灰二が、天才ランナー走と偶然出会うところから始まる。竹青荘には、灰二と走の他にも個性的な仲間がいるのだ。灰二はみんなを半ば強引に陸上の世界に引き込み、わずか一年で箱根駅伝へ出場しようとするのである。

 

箱根駅伝を目指す十人のメンバーは、みな個性的でイキイキとしている。駅伝は、タスキをつなぐ仲間たちの絆があり、見てる人々に感動を与えるスポーツだ。本を読んでいても、ランナー達の息づかいがまるで聞こえてくるかのようだ。高熱が出たり足を故障したりして、走っている途中に苦しくなっても、仲間にタスキをつなぐために一心不乱で走り抜く姿は実に感動的である。

 

今までは駅伝には全く興味がなくテレビでも見たことがなかったが、この本を読んでから、駅伝に興味を覚えてテレビで放映されるたびに見るようになった。単なる勝ち負けだけではなく、若者達の繰り広げるドラマを駅伝を通じて見る事ができるのである。駅伝に全く興味が無い人でも十分にこの本は楽しむ事はできるだろう。スポーツをしていた人、クラブ活動をしていた人、大学生だった人、何かに挫折した事のある人、様々な人がこの物語りの主人公や仲間たちに共感することができるはずだ。

 

また、スポーツ単なるスポ根ものではありません。足の故障から挫折を味わうメンバーや、親との確執があるメンバー、外国人留学生、双子兄弟などの多様な立場から、様々な悩みや思いが伝わり、考えさせられる事がいろいろとあった。若者らしい淡い恋愛の場面もある。スポーツの話しだけではなく、いろいろな大学生の葛藤を垣間見る事ができた。

 

箱根駅伝の1区から10区までを掛け抜けるそれぞれのメンバーに、それぞれのストーリーがあり、どの人物も魅力的で素敵な物語り。そして箱根駅伝が終わり、その後、灰二は大学の陸上部のコーチとなり、走は大学に残りまた箱根駅伝を目指す。新入生が加わり新しいメンバーとまた新な挑戦が始まるのだ。暇な時に読もうと買った本だったが、読みだすと止まらずに夢中になって読み終えた。箱根駅伝のメンバーの躍動感とともに私も一気に駆け抜けて読んでしまったという感じでである。

 

(40代女性)


 

 

 

 

この本を書店で見つけたのは、憂鬱の気分の仕事帰り。気分転換に面白い本でも読むかなぁ、と思ってしばらく書店内をぶらぶらしていた時のことだった。寄せ集めのチームが箱根駅伝を目指す話だということで、イメージ的には「タイタンズを忘れない」だったり「ルディ・涙のウィニングラン」だったりスポーツ感動ドラマを想像しつつ、成長物語は読んでいて気持ちいいからなぁ、と少し期待して買って帰った。

 

その日は、ほんとうにイヤな日で、夕食を作っているときも食べているときもイライラしていた。そして、21時過ぎにベッドに横になり『明日はマシな日になるかな、ならないだろうな、さぼろうか』などとグルグル考えながら、買ってきた本を広げた。駅伝の選手には向いていない青年たちが集まってきて、ちんたら練習するうちに、いろんな発奮するエピソードがあって、本気になって頑張りだして、箱根駅伝に出場するんだろう?と思いながら読んだら、本当にそういう話だった。

 

成長物語だった。しかし、現実にこの選手たちが私の目の前に来て「箱根駅伝を目指す」と私に向かって言ったとしたら、応援するよ!とは言えないくらいの寄せ集め度。マンガオタク、ヘビースモーカーなど体力的に無理と思われるし、逃げ足が速いからパンを万引きするなんてどうかと思うし、他のメンバーも経験がないというか、見るからに無理なようす。

 

頑張って練習を始めるものの、目も当てられないヘタリ具合。もう、頑張ってよ、せっかくのチャンスなんだから、と思いつつ読んでいた。次第に応援するような気分になって、だんだん楽しくなってきていた。イヤなヤツが出てくると、すでにメンバーと一緒に「こんなヤツやっつけてやる!負けるもんかっ」という気分になっていた。

 

メンバーがケガで再起不能になるかも、だけど他の仲間には秘密にするというくだりはハラハラするあまり、横になって読んでいる場合ではなくなって、起き直っていた。いよいよ試合が始まり、ついに箱根駅伝に出場することが決まったときには、もう読むのを途中で止めることができなくなっていた。明日の仕事のことが頭をかすめたが、すぐに忘れてしまった。

 

最終章にさしかかった頃には読み終わるのがもったいない、でも読みたい、そして涙を拭きながら読んでいた。感動、感激、しばらく感じたことがなかった心の動揺で頭がぼーっとなり、読み終わったときには思わず「はぁー」とため息をついた。子供のころ、算数の式を一生懸命問題を解いて、その間、息を止めて書いていて、書き終わって、はぁっと息を吐いた時のようなため息をついた。

 

読了したのは朝4時だった。もう仕事でいやな気持になったことはどうでも良くなっていた。考え方が変わったというのは大げさだが、私にも強く風が吹いてきて、あんなことで憂鬱になることはもうないなと、と思えた。寝不足だけど、元気いっぱい出勤してやるぞ!という気概がみなぎっていた。箱根駅伝を走ったことで何かが変わったのだった。走ったのは私じゃないけれど。

 

(50代女性)


 

 

 

箱根駅伝を舞台に描かれた本作。箱根駅伝ファンは勿論、箱根駅伝に初めて触れるという人にも分かりやすいように、出場までの流れが非常に丁寧に描かれていた。主要人物の一人・ハイジが陸上未経験が大半であるにも関わらずそれをチームとして集めてまとめあげる。

 

そして約半年で箱根駅伝出場権を得て更にシード権まで取るという、実際に箱根駅伝を予選会含め長年見ている自分からすると「これは絶対に無理だろう」とすら思えることなのだが、それを裏付ける走者達のキャラクター付けが非常に魅力的だ。例えば運動オンチである王子。オタクである彼が標準記録まで走れるようになるまでといったら文章で読み取る以上の苦労や努力があったことだろう。

 

他にもダイエットに励むものあり、女子のために走るものあり、就職のために走るものあり。理由は様々だが、それが一つの目的に向かっていく様は読んでいて非常に清々しいのだ。主人公であり主たる目線として描かれているカケルは他の人物からすれば陸上のエリート中のエリートだ。彼からして無理だと言っているものを次々と実現させていくハイジ。

 

少々押しの強い部分も多いハイジであるが、論理的な面が非常に多く、それがカケルのみならず読んでいるものすら納得させてしまう説得力を持っていて、物語、そして駅伝の世界にどんどん引き込まれた。走者である10人それぞれが皆個性的で、駅伝というより青春を走っている。

 

時には対立し、最終的には箱根駅伝のゴールを目指すという王道ストーリーながら、時には恋愛模様も混じったりするため、そんなシーンには自分も学生時代に戻ったようなような感覚が起こった。また予選会までの描写も丁寧だが、箱根駅伝中の出来事に関しても非常に細かく書かれていて、駅伝ファンでもテレビ中継だけでは知ることの出来ない仕組みなどを知ることが出来るのである。

 

それは今後の駅伝観戦にも大いに役立ち、現実でも順位だけを追うのではなく選手一人一人のドラマを追いたくなってくるのだ。元々箱根駅伝は大好きだったが、この作品に触れることによりますますこの競技を魅力的に感じ、更に好きになった。予選会以前の記録などにも注目するようになったりと、駅伝のみならず陸上競技にまで興味が広がっている。

 

箱根駅伝で同じようなことが起こるのはかなり難しいのだが、いつか本当に起こるのではないか、そんな風にすら思っているのだ。そして奇跡のようなそれが現実になるのを少し期待しながら、毎年観戦を楽しんでいる。

 

(30代女性)


 

 

 

一緒にがんばる仲間がいるっていい、そう感じることができる本だ。架空の大学「寛政大学」に通い、竹青荘に住む大学生たちが、10人で箱根駅伝に挑戦する小説。私自身、箱根駅伝が大好きで、毎年1月2日、3日はテレビで箱根駅伝を見続けている。そんな私がたまたま箱根駅伝の小説があると知り、読みはじめた。この小説で印象的なのは、たった10人で箱根駅伝にのぞむという無謀さと、ベタベタしすぎない仲間たちの関係だ。

 

大学生という時代が、20年も前に過ぎさった今だからこそ、とても心に響く。青臭い、こんなの現実には起こらない、確かにそうかもしれない。でも、年齢を重ねるとますます「仲間と何かする。シンプルに何かに一生懸命になる。」ということが難しくなるので、学生のうちにこんな体験ができたらよかったと、今になって思う。中心となる、走とハイジの師弟関係のような友情がとにかくうらやましい。走る才能があって、走りたい気持ちもあって、走り続けている「走」。

 

その走をみつけ、竹青荘に誘い、箱根駅伝にも挑戦させてしまう「ハイジ」。活かすべき才能と活かせる能力がぶつかって、他の住人たちを刺激していく。こんな師弟関係のような友情が、うらやましく思ってしまうのは、私自身がこんな人間関係を持ちたいと思いながら、持てないでいるからだ。今の私は、どう仕事をしていくか、どう進めばいいのか、才能があるのか、ないのか。

 

誰かに相談したいと思いながら悩んでしまうことが多い。そんなときに、ハイジのような師匠がいたなら、どんなに素敵だろう、と想像してしまう。食事にも起床時間にも、もちろん練習も気遣ってくれて、ハイジ自身も自分を磨き上げるように走り込んで、走とハイジはどんどん磨かれていく。そうしながら、お互いに「なくてはならない存在」として、友情を深めていく。そんな二人の関係がとにかくうらやましい。

 

また他の住人たちもそれぞれに友情を深めあい、協力しあい、喧嘩もし、箱根駅伝へと向かっていく。ときに笑いながら、泣きながら、悩みながら、苦しみながら、どれをみてもまぶしくて、キラキラしていて、いいなぁと思う。そんな中でも共感してしまうのは「キング」だ。

 

クイズ好きで、深い友情を得られていないと、自分で気づいているキングには、今の私が投影されているようで、とにかく共感してしまう。おまえもっと自信もてよ!と応援したくなる。ラストに向けてとにかく感動した。ありえない、と言われたとしても、やっぱり感動してしまう。続きも気になるけれど、この1冊で完結しているのもいいのかも、とも思った。気づいていないだけで、実は近くに「一緒にがんばっている仲間」がいるのかも、と読んだ後スッキリした気持ちになった。

 

(40代女性)


 

 

 

三浦しおんさんの作品であるということと、大好きなの箱根駅伝を描いている小説ということで、以前から気になっていたので本屋さんで手に取ってみた。表紙を見ると、一人で走っている青年の姿があり、仏像や観音様に似合いそうな様相をした白い帯のようなものが描いてある。駅伝の小説なのであるから、表紙はもっと元気の良いカラフルなイラストを想像していただけに、少しだけ違和感のようなものを感じた。

 

それと同時に、ただ元気よく箱根駅伝という有名な競争に挑む話ではないのかな、と興味を持って購入することに決めた。はじめは、竹青荘という今にも崩れそうな古いアパートで暮らす、いろいろな大学生の性格や日々の生活についてが延々と続いており、一体いつになったら駅伝の話になるのだろうかと飽きてしまった。

 

飽きたというよりも、私は駅伝の小説が読みたくて買ったのだから、当てが外れてがっかりした感じと言った方が当てはまるかもしれない。しばらくは、机の上にて休憩の本となった。1カ月ほどたってから、気を取り直して続きを読み始めることにした。だんだんと走ることに関する話になり、読むスピードも早くなってきた。そして、駅伝の予選会に出場するストーリーに入ってからは、さらに加速度がついてきた。

 

自分も箱根駅伝を目指しているひとりとなった気分になった。選手としてというよりは、商店街の人たちが応援しているように、この10人の応援団の一人としてである。箱根駅伝のスタートを切る頃には、完全に物語に入り込んでいた。そして、選手一人一人の身上や、今までの話の中では出てくることのなかった様々な思いなどが紡がれていく。

 

ここで私は心を打たれ続けた。そしてその都度感極まってしまうものだから、読むスピードは相当遅くなっていった。三浦しおんさんはこれをここに持ってきたのか・・・。最後には、走ることが神々しいほどの崇高なものであると思い知らされたのである。そして、表紙のイラストに感じた思いとが府に落ちることとなった。

 

(40代女性)

 

 

 

 

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1 件のコメント

  1. ティニー より:

    背中を押してくれる本第1位。笑えるし、泣ける本。10人中7人が陸上未経験の素人集団が苦しみながらも頂点を目指して、走り続ける物語。600ページ以上ある本だが次へ次へとどんどん読めちゃいました。

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