「風が強く吹いている」の読書感想文①
私はとにかく箱根駅伝が好きだ。特に陸上をやっていたわけでもないし、ジョギングだってこの先もすることがなさそうだ。だけど、正月には必ず箱根駅伝のテレビ中継を観る。1月、2日と3日は半日テレビの前に座っている。
かくいう私も昔は、正月になると必ず箱根駅伝をテレビで観ている両親に対し、何時間もただ走っている姿を見ているのが何が面白いのだろうか、と思っていた。それが面白いのだ。ただ走っているのを見るのが面白いのだ。
そうだとわかったのは大人になったからだろうか。10人中、陸上経験者が3人のみで、ほぼ素人の集団で箱根を目指す物語である。主人公は、その全員がそれぞれ持つ何かの要素を「駅伝に向いている」と考え、渋るメンバーを説得しトレーニングを始めるのだ。
しかし、素人集団で駅伝に勝つなんてことは、私のような素人が考えても絶対不可能なことくらいはわかる。おそらく現実には無理なんじゃないかと思う。だけど、小説だと言ってしまえばそれまでだが、そんなことはどうでもいいと思わせてくれる。
箱根に出場するには、ただ予選会に出ればいいのではなく、それまでに出場資格を得るための記録会などがあり、彼らはひとつひとつそれをクリアしていく。
もちろんメンバーの中のいざこざや、どうやったって思ったような結果がでない者もいるし、他の学校の嫌がらせあり、主人公も足に古傷を抱えているし、さまざまな困難が立ちはだかる。でも結局は皆で力を合わせて乗り越えていくのだ。
そして彼らの姿に動かされた周囲の協力も得て本戦の日を迎える。正直、結果も、出来過ぎだろうと思う。でも、それもどうでもいいと思いながら読んでいた。逆にここまで来て、はしごを外さないでくれと。とにかく予選会ぐらいからずっと読みながら泣いていた。
でも、清々しい涙なのだ。走ることが好き、たったそれだけでこんなに真面目に一つのことに打ち込めるって素晴らしい。やっぱり若いって素晴らしい。
私はもうおばさんになってしまったけれど、娘には若い時は何でもいいから無心に打ち込めるものを見つけなさいと、この本で教えたいと思った。
(50代女性)
背中を押してくれる本第1位。笑えるし、泣ける本。10人中7人が陸上未経験の素人集団が苦しみながらも頂点を目指して、走り続ける物語。600ページ以上ある本だが次へ次へとどんどん読めちゃいました。