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読書感想文「舟を編む(三浦しをん)」

「舟を編む」の読書感想文①

小泉政権の痛みを伴う改革に端を発した雇用不安定。非正規雇用全盛の現代、私も非正規雇用者の一員だ。将来の先行きが見えない現状、私がいなくても、私の仕事を誰かがし、滞りなく世界は回っていくのだと思っている。そこに一筋の光をあててくれた作品、それが三浦しをん「舟を編む」である。
 
とある、生き方不器用な辞書編集者が国語辞典「大渡海」の編集にかかわるお仕事物語である。この作品で辞書を編集することを「編む」という事を知った。私は理系人間なので、編集社といった典型的文系業界に全く知識がない。人から聞くに、人を人とも思わない、締め切りというゴールに向かいひたすら馬車馬のように働かされるザ・ブラック企業というイメージがあった。
 
編集者も吐いて捨てるほどいて、一人が辞めれば、どこからともなく代替可能なものだと思っていた。しかし、辞書の世界はそうでもないようだ。まるで建築家が建築物で後世に自分の業績を残せ、まだ後進の者がその修復に関わることで、同様に歴史に残れるように、自分の歴史を辞書中に残していけるようだ。
 
言葉は生き物で、常に新しい言葉が生まれ続け、時代に不必要な言葉は淘汰され消えていく。生まれたての言葉を、新版の辞書に編みこんでいくことで、辞書編集者は自分の業績を目に見える形で残すことができるのだ。その作業は忍耐力と客観性を要し、自己顕示欲が強そうな一般的なライターとは対極をなすような地味さがある。
 
主人公マジメは他部署では他編集者とのコミュニケーションがうまくいかず、はじかれてしまうが、一本気と言葉に対する関心、知識は人より勝り、まさに辞書編集者としては適任。置かれた所で見事に花開いた人物なのである。彼の恋した香具矢さんも、女だてらに板前を志す、芯の強い女性。
 
女性だからと差別されたり、人生うまくいかない事もあるだろう苦労人。人生不器用なマジメにぶれずに付き添っていく。彼の良いところに気づいてくれてありがとう!私もこんな伴侶がほしい。
 
(30代男性)

「舟を編む」の読書感想文②

舟を編む。一目ではどんな内容なのか検討もつかなかったが、よくわからない本はひとまず手に取ってみるようにしている。触った瞬間、その装丁をしばし楽しんだ。少しざらついた手触りが心地よく読んでいてとても落ち着くのだ。「言葉を渡る舟が辞書である」とし、そのための舟を編む編集者たちの物語と知って納得した。
 
作者も同じようにこの本へのこだわりを見せているのだと。手紙よりメールで気持ちを伝える今の時代、下手するとメールどころかスタンプで済ませてしまうこともある。それはそれで便利であるが、本来使われるべき美しい日本語が省略されていくうちに存在を消してしまうのが悲しい。日本語は世界の中でも難しい言語と言われている。
 
それほどたくさんの微妙な言い回しがあり、それらを有効に使うことさえできれば誤解なく相手に心が伝わる。日本語は使いこなすほど便利な言語と言えるのだ。そこから逃げてしまうことは何とももったいないことで、その価値に気づいていない日本人が多くいる。本の中で辞書作りに生涯を捧げた松本先生、そこに感銘を受けてともに歩んだ主人公がいる。
 
20万語以上もの言葉を誰もが納得いくように表現するのはどれほど難しいことなのだろう。言葉から受ける印象というものは人によって違うために主観を入れずに表す必要があり、この現代で消えかけている日本語も見つけなければいけない。ひとつの仕事にそこまで没頭できる人生というのも素晴らしいが、わたしが想像するのはその「大渡海」を手にする日本人のことだ。
 
言葉を正しく表現するためにわざわざ辞書を開くということは何とも素晴らしい。そうあってほしいと作者が願いを込めているように感じる。そしてもうひとつ強く思うのは、西岡というさっぱりとした青年の存在意義だ。こつこつこなす真面目な人間を支え、緊張をほぐしてくれるような明るい西岡のような人間がいるからこそ、彼らは仕事に没頭できるはずだ。
 
どんな素晴らしい人間にもこういった安らぎが必要なのだ。
 
(30代女性)

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