読書感想文「むかしの味(池波正太郎)」

なんとなく、レトロな時代を感じたくなって手に取ったのが「むかしの味」だ。美食家で有名な池波正太郎氏が、印象に残った飲食店について、ご自分の思い出と共に綴った一冊である。もちろん実在するお店だが、かなり前に出版された本なので、どれだけの店が今も続いているのか……。少なくとも、ホットケーキの章で登場した「万惣」は閉店済みだし、クリームソーダの章で登場した「清月堂ライクス」も、銀座店の喫茶は閉店してしまったらしい。

 

「行ってみたかったなあ……」とションボリしながら、カラーページの写真を眺めてしまった。一方、まだまだ現役なお店もたくさん登場している。この本を読んでから、銀座の「資生堂パーラー」へ行ってみたくて堪らなくなった。戦前、少年だった池波先生が初めて行った時の感激が、微に入り細を穿ち書いてある。大正モダンを感じる店内に、真っ白い制服の少年店員。銀の蓋付き容器に入って出てきたチキンライスの、衝撃的な美味しさ。

 

 

 

トマトグラタンを「西洋ウドン」と例えたり、当時から独特な言葉のセンスを持っていたのだなあ……と、感心した。ミートコロッケ、クリームソーダ。どれも美味そうで、読んでいると唾が沸いて困った。蕎麦の章では、「戦後数年は、弁当無しでは外で過ごせなかった」とありハテナ?と思ったが。外食する店がなかったから、と分かり驚いた。飽食の現代には、思いもよらないことだ。ちなみに、戦後最初に復活したのは蕎麦屋だったそうな。

 

生まれる前のことも、身近な食を絡めるとイメージし易い。今も神田にある、「まつや」のカレー南蛮を食べてみたくなった。ちなみに、この本を読んでから堪らず、老舗汁粉屋の「竹むら」を訪れた。カラッと香ばしい「揚げ饅頭」は、期待以上の美味だった。昔を偲ばせる建物といい、「ここに池波先生が来たのか……」と味わうのは、とても素敵な時間だった。ちなみに、絶賛していた粟ぜんざいも食べたかったが、季節外れで頼めなかった。残念である。

 

(30代女性)

 

 

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