読書感想文「春になったら苺を摘みに(梨木香歩)」

「相手のあるがまま受け入れる」そんな、ウェスト夫人にとっての当たり前を見せつけられるエッセイ集。はじめは、ゆるゆると読んでいたのだが、どんどん彼女に惹きつけられていく私がいた。彼女はどんな荒くれ者も、ひねくれ者も、彼女の子どもたちですらも、ただ「その人のまま、受け入れる」人だ。
 
例え理解は出来なくても、彼女はいつだって柔軟にあるがままに受け入れる。善意と信念にあふれる彼女だけれど、他人に何かを押し付けることはない。彼女自身の信念を尊重するように他人の信念も尊重しているのだ。うん、そうなのだ!私達が誰かと向き合うときに望むことって、結局のところコレなのだ。
 
『そのままの自分を受け入れてもらうこと』簡単なようで難しい。でも、私達はいつだって求めている。そのままの自分のままで受け入れてくれる誰かを。ウェスト夫人本人は、自分がそんな高尚なことをしている気はさらさらないと思うが…。彼女にとっての当たり前を続けているだけだと思う、ごく自然に。
 
つい自分の物差しで相手を測ってしまう自分を恥ずかしく思う。「正しい」とか「正しくない」とか、「為になる」とか「為にならない」とか、そんなイレモノで世間は溢れている。相手が自分の大事な人であれば尚のこと、自分の好みのイレモノに入れたくなってしまう私。
 
でも、そんなの全然フェアじゃない。私自身は誰かのイレモノに入れられることなんて望んでないのだから。分かっている、分かっているのだけれど。そんな中途半端な私ですらウェスト夫人は受け入れてくれるだろう。突然訪れても、言葉が通じなくても、きっとすぐにベッドを準備してくれる。
 
「まぁ、そうなの?仕方ないわね」なんて風に。いつか私はそんな風に他人を受け入れることが、出来るだろうか?人生は一度きり。シンプルに前向きに進んでいこう。出来れば、自分らしい善意をもって。「春になったら苺を摘みに」は私にそんな風に思わせてくれるエッセイ集だ。
 
(30代女性)
 

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