読書感想文「人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)」

「人のセックスを笑うな」というタイトルが、一体どういう意味なのか、タイトルから内容が全く思い浮かばない所に、興味を惹かれて読み始めた。専門学生の主人公みるめと、既婚の学校講師ユリの禁断の恋愛。読み始めは情熱的な恋愛小説なのかと思ったが、最初から最後までぬるくて柔らかい、ゆったりとした言葉で記されていた。
 
叶うこともないが、叶わないとも言えないような曖昧なままの関係に、吐き出すこともできない苦しい切なさを少し残して、物語は終わる。決してハッピーエンドではないが、物語の終盤にユリと決別した後のみるめが、無理して開き直っているような、妙な明るさになぜか微笑んでしまう。
 

 
 
19歳と39歳という歳の差。教師と生徒という関係。既婚者であるユリ。作中には同級生の女の子であるえんちゃんも登場するが、このえんちゃんの存在により、みるめとユリの関係が異質なものである事がより一層際立ってくる。一般的な考え方、流れで見ればおそらく、みるめが普通の学生生活を送っているなら、恋に落ちる可能性があるのはきっとえんちゃんだ。
 
ショートカットで八重歯がある、さっぱりした女の子。そんな子が近くにいても、ユリを好きになってしまうのは、やはり形のない漠然とした「惹かれる」という感情なのだろう。印象的なのは、主人公の学生みるめが恋に落ちる講師のユリが、決して器量の良い女性ではなかった事だ。髪はボサボサで、化粧も薄い。体つきも中年の女性らしい肉付きであったこと。
 
料理や掃除、総じて言うと生活力があまりなさそうな女性。そんなユリにみるめ自身もどうして惹かれるのか分からない。作中のみるめの言葉に「恋してみると、形に好みなどないことがわかる」という一節がある。本作において私はこの部分が一番心に残った。私は今まで、恋に落ちるという感情には、見た目が一番作用していると思っていた。
 
そこに中身が加わり、気持ちが大きくなっていく。料理や掃除ができる、という事なども「中身」のうちに入ると思っていた。しかしこの物語の恋愛は、そういった私の恋愛の価値観と全く違っていた。「惹かれる」という感情だけが、思いを動かしていく。きっとその感情は、見た目や中身という目に見えるもの、言葉にできるものよりもずっと強く、お互いを結びつけるのだろう。
 
物語を最後まで読むと、タイトルが全く違った言葉に見えるような気がした。「人のセックスを笑うな」それはきっと、みるめとユリのこと、ユリとユリの旦那のこと、みるめがユリを思って他の女の子とすること、それら全てが目に見えない「惹かれる」という感情によって起こっているのだと言う事なのだと思う。
 
(20代女性)
 
 
 
 

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