読書感想文「エンジェル・エンジェル・エンジェル(梨木香歩)」

「エンジェルエンジェルエンジェル」は穏やかな物語であり、またパズルのような本である。この物語は、寝たきりのおばあちゃんの深夜のトイレ当番を引き受ける代わりに、熱帯魚を飼うのを許された、コウコが語り主と、女学生時代のころに記憶が戻って家族や友人との時間を語っている、おばあちゃんが語り主の2人の主人公がいる。
 
二つの時間の流れがあり、それぞれの時間の流れで現在と昔の思い出がだんだんと交差していくのである。梨木香歩というと、ファンタジー小説である「裏庭」や映画化された「西の魔女が死んだ」などが有名な作品である。この「エンンジェルエンジェルエンジェル」は女性二人が、それぞれの立場で、物語をゆっくりと進ませていく。
 
二人の共通点は、同じ女性であること、聖書に興味があること、一人っ子であることだ。カフェイン中毒から抜け出そうと考えたコウコは、熱帯魚を飼うことで情緒を安定させようと考えた。介護で疲れる母親の代わりに、おばあちゃんのトイレ当番を引き受け、熱帯魚を飼うことを許されたのだ。
 
水槽を置くために、物置の隅から、浅い引出が付いている、古い小さな机を持ってきて、その上に水槽を置き、夜中、1人でみる熱帯魚たちを楽しみにしていた。突然、家族の事を忘れているはずの、おばあちゃんがコウコに話しかけてきたのは、熱帯魚を飼い始めた日だった。
 
深夜に熱帯魚を見ている時だけ、おばあちゃんの記憶が女学生時代に戻って、少女のような語り口調で、孫のコウコに話しかけるのだ。そんなおばあちゃんを愛らしく思い、コウコも少しずつ、おばあちゃんとのおしゃべりを楽しんでいく。おばあちゃんは裕福な家庭で育ち、女学校に通っていた。
 
お世話をしてくれるツネや、優しいばばちゃま、大好きな先生や友達に囲まれていた。女学校には2つの女子グループがあり、おばあちゃん派と山本さん派に分かれていた。おばあちゃんが大好きな女学校の先生と、敵対している山本さんが仲が良さそうなのを憤慨しており、同時に密かに山本さんと仲良くなり、コウちゃんと呼んでみたいとも思っていたが、なかなか行動に出られなかった。
 
そんな時、先生と山本さんが姉妹だという事実を聞き、先生と山本さんが特別な関係であると思い、ショックを受けたことと、本当の姉のように思っていたツネが故郷に帰ることが同時に起こり、焦燥感からツネに八つ当たりをしてしまった。ツネが大事にしていた、兄からもらったという机を自分にくれといったのだ。
 
そんな自分は、天使ではなく、悪魔になってしまったと思った。結局、わがままを言ったことを謝ることができず、ツネは故郷に帰ってしまった・・・。コウコは、深夜のおしゃべりの中で、おばあちゃんの事をさわちゃんと呼ぶようになっていた。水槽の中では、熱帯魚がお互いを攻撃して、数がどんどん減っていった。
 
そのたびにさわちゃんと、いじわるな熱帯魚をどうしたらいいかなどの話をした。2人の思いも届かず、ついに最後の1匹になり、その最後のエンゼルフィッシュが死んでしまった日から、さわちゃんはおしゃべりをしなくなった。その数日後、さわちゃんは亡くなった。
 
さわちゃんもいなくなり、熱帯魚もいなくなったコウコは、水槽の片づけを始めた。水槽を置いていた小さなテーブルを片付けるときに、引き出しの中に、隠し引き出しがついているのを発見した。その中から、素人が彫ったような木彫りの天使が出てきた。コウコはさわちゃんに似ているなと思い、大事に自分の近くに置くことにした。
 
この物語を読んで、登場人物の思いが交差し、優しさが次の世代の優しさへとつながっていくように感じだ。その木彫りの天使は、おそらくツネが彫ったものだろう。それを最後までさわちゃんは気づかなかった。知らずに天国へ行ってしまった。さわちゃんが、孫にコウコと名付けたのも、山本さんのことを後悔していたためだろう。
 
親しげにコウちゃんと呼びたかったのだろう。ツネも、本当はさわちゃんと仲直りしたかったんだろう。本を読んだあと、登場人物一人一人の思いを想像すると、切なくなり、優しく温かい気持ちになれた。
 
(20代女性)
 

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