読書感想文「竜と流木(篠田節子)」

この本は、母からすすめられた物だ。普段私は、映像化されるような起承転結のはっきりとした、テンポの良い、華やかなストーリーを好んで読むことが多い。それに対してこの「竜と流木」は、いい意味で地味で、静かで、じわじわと楽しむことができる物語だった。

 

大どんでん返しや大きな感動や、お洒落な複線の数々・・・!言うものはなかったが、読み進めるうちに、ゆっくりと確実に忍び寄る不気味な恐怖を感じ、まるでホラー映画でも観ているようで、気が付けば一気に読んでしまった。

 

子どもの頃可愛がっていた「ウアブ」という人畜無害な可愛らしい生き物。彼らを守るために主人公たちが取った行動は、結局、生態系を揺るがし、人間の生活まで脅かす事態になっていく。この本を読んでいて最初に頭をよぎったのは、ミドリガメだった。

 

ミドリガメなんて呼ばれているから、てっきり私は日本のアマガエルと同じように捉えていたのだが、ところがどっこい彼らは本名(というか学名か?)「ミシシッピアカミミガメ」というしっかり外国の名前がついた外来生物なのだ。

 

子どもの頃は緑色で可愛らしいが、大きくなるとちょっと迫力がある。彼らは農作物を食い荒らすなど、私の知らないところで多大なる被害を与えおり、2020年には輸入・販売が禁止になる動きだという。そして野生化しているものは駆除されるらしい。

 

まさにこの本の「ウアブ」たちも、結果的に害獣(獣?)として成長・進化を遂げてしまった彼らを根絶させなければならなかった。その中にはもちろん、害のない、主人公たちの愛した可愛らしい幼生も含まれている。だけど事態は、可哀想では済まされない。それが唯一の手段なのだ。ベストではなく、ベターだけれども。

 

とても心が痛むシーンだった。だけど、素人の私でもわかりやすい手段。生態系が崩れれば、他の植物や生物まで脅かされてしまう。そしてその被害はその地域だけにとどまらず、偶然と進化の積み重ねによって世界中に広がってしまう。そう、流木に乗り、海を越えて。

 

大げさなようで、実は、今ソコにある危機を、真実味をもってこの本は教えてくれた。きっと、ある選択肢を辿れば、人類はこうやって順調に自滅するんだろう。嫌だな。自業自得だけれど・・・。最後は、何らかの形で生き延びた「ウアブ」が、また別の場所で、人間と共存を始めるという、物語の始まりとリンクするような形で終わる。

 

読み終わったとき、私たちの住むこの世界は、繊細で、常に絶妙なバランスで保たれているんだと、柄にもなく考えてしまった。とりあえず、ペットは捨てたり、うっかり逃がしたりしないこと。当たり前だけれど、当たり前じゃない人たちがいる。どうしたものか。そう思わせてくれた。

 

(30代女性)

 

 

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