読書感想文「平面いぬ。(乙一)」

この本と出会ったのは、中学生の頃だった。当時は小学生用の大きめの文字にルビがふられていたりするような本しか読んだことのなかったわたしだったが、隣の席の男の子が読んでいる本に驚いたことを覚えている。
 
いつもは勉強なんて全くせずに授業中寝ていて、挙げ句テスト中もよだれでテスト用紙に穴を開けてしまうような子だったので、小さくてずらっとならんだ字が並ぶ文庫本を休み時間に読んでいたからだ。難しそうなのに、こんな子まで夢中にさせてしまうこの本は何だろう、と興味を持ったのだった。
 
急いで本屋さんに行って買うと、家に帰ってのめり込むように読んでしまった。短編集で4つのお話が入っているが、わたしが一番思い入れのある話は「BLUE」だ。その理由は、人形が動いたり話したりする物語で、かなりファンタジー色が強いからだ。実はわたしは、幼稚園の頃から絵本づくりにはまり、人形が生きているかのような、まさに夢を見る子どもならではの物語を作っていた。
 

 
 
その延長線上にこういう物語があるのだろうと考えると、そのファンタジーな部分に共感できるところがある。この物語を読んだ後は、押し入れから昔自分の書き溜めた絵本や本を引っ張り出してきて、思い出に浸ってしまった。
 
さらに、小学生の頃は推理小説も好きで、物語の途中ではられた伏線が回収されていくことこそ物語の醍醐味だ、という偏った読書観も持ち合わせていたため、随所にある気にも止めなかった言葉が「こういう意味だったのか」と分かる瞬間、嬉しさに震えてしまった。
 
あまりの嬉しさに、この物語の内容をまるまる一話分、弟に話して聞かせたほどだ。あまり話の上手ではないわたしだったが、あっちにいったりこっちにいったりする話を、弟は気長に聞いてくれた。今考えても、よくあんなに細かく話したものだと思う。
 
この物語がわたしに与えたのは、そんな物語の面白さや感動だけではなく、物をつくりだす勇気という部分もある。小学生の頃は楽しんで物語を自作していたが、中学生ともなると、まわりの人たちの文章力を知れば知るほど自分に自信がなくなってきていた。やっとまわりが見えてきた証拠でもあるのだろう。
 
自分が書く文章なんて、幼稚で陳腐で、全く面白くもない。何かをつくっても、それでは意味がない、と書く楽しさが分からなくなってしまっていた。しかし、自分の原点をこの物語に見出だせたことによって、ほっとした。自分が楽しんで書いていれば、きっとそれが文章に表れるものだと気付くことができたし、それが大きな勇気となった。そのおかげで、今でも文章を書くことは大好きだ。
 
(20代女性)
 
 
 
 
 

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