読書感想文「GOTH(乙一)」

乙一作品に共感したのは、友達が出来ず孤独を感じていた高校生の時である。ホラー映画や猟奇的な殺人事件に興味があった当時、GOTHに登場する殺人鬼は、これまで読んだ小説に登場する殺人鬼達とは一線を画していたため、興味がそそられた。
 
周囲に溶け込まない主人公2人に対しても、親近感を覚えた。これまで読んだ他の推理小説では、犯人は「常軌を逸した謎人物」という描かれ方をしていたが、GOTHに登場する犯人達は異なる。犯人にとって殺人は日常の出来事で、異常な犯罪に手を染めているという感覚が全くないという点が特徴である。
 
「手」というエピソード中の犯人は、高校教師をしている。授業をこなし、生徒・同僚とのコミュニケーションも傍目には卒なくこなしているように見える。しかし本人にとって周囲の人間は、「二つの手」が主体であり、身体やその人の性質等は全く意味を成さない。
 

 
 
相手と会話を交わしていても、本人にとっては「手との会話」である。普通の人間が相手の顔や身体的特徴に好感を抱くように、犯人は相手の手に好感を抱くのである。「手は嘘をつかない」と犯人は言う。人間の発する言葉には嘘偽りがあるが、手は何も語らずにその人となりを表しているから美しいのだ、と。
 
日常生活を難なく送るため、手への執着を周囲に悟られないよう振る舞う犯人だったが、いつしか自宅の冷蔵庫に手を並べたい衝動に駆られ、気に入った他人の手を切断すべく町へ繰り出していく。私は人間の上辺と本質は異なるということを実感させられた。
 
また、他人が自分をどのように見ているのかが気になって仕方がなかった十代の頃、この作品を読んでよりそれを恐怖に感じてしまった。犯人だけでなく、主人公の二面性も興味深い。主人公の「僕」目線で物語が進行し、読み手は「僕」の本音を知る事が出来る。
 
クラスメートを冷めた目で見ていること、しかし孤立すると浮いてしまうので、学校での日常を問題なく過ごすため周囲に合わせ、ドラマやお笑い番組をチェックし適当に話を合わせている。「僕」の学校での友達は、「僕」を面白い奴と思っているだろう。
 
しかし「僕」にとっては本当の友達等存在しない、それを寂しいとも何とも思っていない事に当時の私は憧れた。この作品に共感出来るであろう人は、おそらく十代の多感な時期に孤独を感じた人なのではないだろうか。
 
(20代女性)
 
 
 
 

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