「夏と花火と私の死体」の読書感想文
この作品を読んで、一言で感想を言うと衝撃の一言であった。本の表紙の可愛らしいイラストからは想像もつかない展開に、ページをめくる手が文章を追いかけていく眼球が止らなかった。主人公と思われる少女が冒頭であっけなく、本当にあっけなく殺されてしまう。
主人公が死ぬというのは最近ではよくある話なのかもしれないが、あまりにあっけない。私はもっと爆発的な展開を期待していたが、期待を裏切り殺されてしまう。そこからこの物語は始まるのである。
奇しくも殺人鬼となってしまうとっても無邪気な弥生ちゃんのお兄さんは、年相応の可愛らしさも垣間見える瞬間もあるが、全体を通して素晴らしい判断力と行動力が年齢との違和感を感じ、物語に引き込まれた。
昔、私が子供の頃、毎年夏に東北の祖母の家に2週間ほど滞在していたが、あの頃を思い出す。夏の田舎独特の空気と、どこか懐かしい空気と匂い。経験したことがない方でも容易に脳内に架空の田舎の夏の情景が思い浮かぶはずだ。
土の匂い、水の流れる音、カエルの声、すこし湿った生ぬるい風、全てが懐かしく思える。それをしつこくなく、押し付けがましくなく、かといって軽くもなく表現されている。読み終わったあとに、「気分爽快」となれる作品ではないが、思春期のなんともいえないパステルカラーが混ざり合った何色とも表現しがたいカラーをこの物語から感じた。
(30代女性)
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