「図南の翼 十二国記」の読書感想文
『十二国記』は子供の頃アニメを見ていたが、今度新刊が発売されると聞いて既刊を読むことにした。『十二国記』はタイトルの通り12の国がある世界の中華風ファンタジーだ。
この『図南の翼』では12歳の少女が王様になるまでの苦難の旅路が描かれる。主人公は利発だが大人とも対等に渡り合おうとする気の強さで、大人の用心棒とぶつかり合いながらも旅を進めていく。
妖魔という魔物が襲い掛かってくる危険な場所で、用心棒に守られながら、あるいは自分で危険な道に飛び込みながら目的地を目指す。登場するキャラクターも魅力的で、ハラハラする展開も多く、どんどん先を読み進めたくなった。
設定が細かくて覚えるのが大変だが、読み飛ばしても話の筋自体が面白いので充分楽しめる作品だと思う。はじめから王様になると分かってはいても、どのように王様になるに至るかが気になって、最後まで惹きつけられた。
主人公は子供だからと大人の都合に振り回されたり、見栄のせいで正しい選択ができない大人の不器用さなど、子供と大人についてリアルな描写が多く、「あるある!」と言いたくなることが多かった。
自分こそが王様になるべき人物だと立候補した他の人たちも登場するが、人間の醜い部分などもよく描かれていて、逆に主人公の良さもしっかりと表れていて主人公がどんどん好きになった。恵まれた者と恵まれない者の立場や身の振り方について描かれることが多く、とても考えさせられた。
死と隣り合わせの旅の中で、危険を回避する方法に恵まれた者は、誰かの命を犠牲にしながらも進むことができる。裕福な家に生まれた者は立派な食事が与えられて、貧しい者は粗末な物しか食べられない。主人公は恵まれない者の存在を無視できないが、全員を救えるわけでもなく葛藤が続く。
私も、この日本に住んでいて安全でご飯も普通に食べられて、でも世界には飢えや戦火に苦しめられている人がいるという罪悪感のようなものを抱えていたので主人公に共感して、物語を読み進めることで心が軽くなるような言葉に出会えて、この本に出会えて良かったと思った。
(30代女性)
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