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読書感想文「残穢(ざんえ)(小野不由美)」

「残穢(ざんえ)」の読書感想文①

私は元々ホラーやミステリー系統が好きで、よく色々な方の本を買っては読んでいる。その中でも、前から気になっていた本が「残穢」だ。これは今まで私が味わってきた怖さとは全く異なるように感じた。幽霊やそれにまつわる怪奇現象の話である。目次を読むと大正や戦争など、歴史に深くまつわっている。
 
作者にとある女性の読者から来た、実際にあった経験談を元に、この本が作られている。最初のうちはよくある話で、そこまで怖さは感じていなかった。だが、読み進めていくうちにこの本の本当の怖さがわかり始めて来た。それは、後ろを見たくない恐怖とはどこか異なった本である。口コミで定評がある理由がものすごくわかった気がする。
 
あらすじに戻ると、その読者とやり取りを進めていくうちに、その怪奇現象が隣の部屋へ、隣の団地へと続いていってしまう。その怪奇現象の根本は何かを、作者小野不由美さんと、その読者が探っていくストーリーだ。これだけを聞くと、よくあるストーリーに思えてしまう。
 
私もそうだった。皆が怖い怖いと怯えるけど、実は私が今まで読んできたものと対して変わらないだろうと思っていた。だが、それは間違いだと知った。感想として、この本は本当に怖いことだ。とにかく怖い。少し細かく言ってしまえば、どこまでが本当でどこまでが創作かがわからないことだ。私は、その本にある最後の一文で全てが一転した。
 
そしてそれと同時に更なる恐怖が私を襲った。よくある「本当にあった怖い話」が好きな方には持ってこいかもしれない。とにかくこの本は恐ろしく、全てはその一文にあるためだなと感じた。読み終えた後も一人でトイレ行けなくなるほどだった。個人差はあるかもしれないが、恐ろしいと感じる方は多いだろう。ホラーやオカルトが好きな方には是非読んでほしい。
 
また、怖さの物足りなさを感じている人にもオススメしたい。私は一度読んで以降、読みたいという気持ちは無くなってしまった。
 
(20代女性)

「残穢(ざんえ)」の読書感想文②

ホラー小説としては格段に面白かった。「何となく気になる」という体験者の談が聞き込みを続けていくうちに不気味さが増してくる。ルポルタージュ風の構成は新鮮で、世に出ている怪談を一通り読み終えている身にはスリルと臨場感を感じさせるに充分であった。
 
語り手が体験するものは実害の無い不可思議な現象と不安のみであり、不幸な目に遭うのはあくまで顔と名前だけを知っている他人というのも絶妙なリアリティがある。理不尽さと因縁が怪談の面白みであると思っているので淡々と事実として語られる怪異の数々はどれもこれも単独のエピソードとしても不気味であったが関係性を徹底的に炙り出した上で全ての怪異を紐付けていく過程に目が離せず、睡眠時間を削って読み進めてしまった。
 
モデルが実在する作家や怪談マニアなら知っている有名な事件を織り込んでいるのも引きつけられた大きなポイントである。あの作家がいかにも言いそうなセリフ、起こしそうな行動というのが如実に表現されており、作中の事件が根深いものであると恐怖感を煽られた。
 
ただし、物語の根幹となる曰く付きの話については著者の完全なるフィクションであり、これにより未知の恐怖を味わうことになる。その恐怖は聞くだけで伝染する怪異として作中に登場するのでフィクションと現実の境目が曖昧になり、読後の満足感は今まで読んだホラー小説の中でも飛び抜けて高かった。
 
「知っている」人間ほど怖くなる、いわゆる怪談マニアなら必読の書であると言える。こういった手法の小説が増えてくれれば良いのに、と切に望んだが発売から六年経った今でも後発の作品には巡り会えていない。ただ一つ引っかかったのは著者をモデルとした語り手が京都に家を買うくだりが物語の進行に関係の無い自慢話にしかなっていない点である。
 
心霊物件と曰く付きの土地を題材にした小説において、何ら役割を果たさない無駄な行間であった事だけが残念である。この一点のみの問題で著者の他の小説にも手をつけずにいる。
 
(30代女性)

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