短編小説が四編書かれている小説だ。タイトルにもなっている1話目の「ぼってぇきょうてぇ」はオカルト好きにはたまらない世にも奇妙な物語だった。主人公がこれでもかと言うくらい不幸な事ばかり背負っている人生であり幸せを感じる要素が一つもない。そんな人生の中で形成されていった性格から発する言葉や喋り方が何とも薄気味悪かったです。後半数ページの主人公の秘密と最後にその秘密を明かした後が書かれてないのがまたその後の想像をかきたて、読んだ後もその後を色々と妄想してしまい忘れられない作品となった。
2話目の「密告箱」は男の弱さと女のしたたかさ、強さを感じる作品だった。あんなにできた嫁がいるのに自分の仕事でのストレスにより他の女へ依存してしまう夫と、それを知り一気に愛情が憎しみへと変わってしまう妻。しかし妻は子供と平和な家族を守る為に取り乱さず、でも虎視眈々と夫の苦しみと死を願う姿が本当にゾッとした。妻を怒らせたら怖いんだぞということをこの本を読んで世の男性達に知って欲しい。
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この物語での妻の存在は決して特別な女性と言うわけではなく同じ境遇になればこんな風になる女性は多いのではないかと感じた。3話目の作品「あまぞわい」も昔の話であるはずなのに現代の社会で起きても全く不思議ではない男女の歪な情事が描かれていた。しかし男女云々というよりも先祖から続いてきた持って生まれた「運命」というものは逃れられないし悲しいものだなということを感じた。そしてこの物語で1番感じたのは「いつの時代も女ばかりが男に振り回されがちで、損をしてしまう」という事実に対する悔しさだった。
そして最後の作品「依って件の如し」はかなりグロテスクな描写もあり少し気分が悪くなってしまう部分もあったが、この本の中の小説では個人的に1番のインパクトがある作品だった。主人公の家族に纏わる最後に暴かれる秘密がドカンと衝撃を走らせたし優しいはずの周りの人も実は秘密と利害関係を持った人だったということがわかった時、こんな世界にもし自分が住んでいたら絶対に人間不信に陥ってしまうだろうと思った。さすが有名小説。オカルト好きにはこの上ない満足感を得られる一冊だった。
(20代女性)
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