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読書感想文「しゃべれどもしゃべれども(佐藤多佳子)」

「しゃべれどもしゃべれども」の読書感想文

この小説を読んだ後は、しばらくは他の小説は読まないでいたいと思うほど心に入り込んでくる話である。言ってみれば、大好物を食べた後にこの美味しかった味や余韻をほかの食べ物で洗い流したくない、そんな気持ちにさせる、とても貴重な小説である。登場人物は数人であるが、すべての人物に感情移入してしまう。
 
子供からおばあさんまで全くもって別々のキャラクターなのだが、ああその気持ちわかるよ、そういう態度取りたくないと思っているのに取っちゃうんだよねえ、などとといちいち思っているうちに自分もこの小説の世界を生きているかのように感じてしまうのである。
 
特に黒猫に例えられている、とっつきにくく美しい女性に引き込まれてしまう。根は優しいし繊細なひとなのであるが、ついつい周りの人につっけんどんにしたり、優しい人を警戒しているのでせっかくの好意を受け入れることができないのである。主人公もなんだこいつはなどと感じながら物語は進んでいく。
 
紆余曲折を経て、最後にはお互いに惹かれていくのであるが、この過程にも読んでいるほうはやきもきしてしまうのである。終盤で、寒い日の公園あたりで主人公がこの女性を抱きしめる場面があるのだが、思わず涙が出てしまう。やっとこの女性も人のやさしさを受け止めることができるようになったのだ、しかもお相手はうらやましくなるような良い人柄の男である。
 
これからこの女性に幸せになってほしいなあと心から願ってしまった。さて、この2人の縁を結ぶことに多大なる貢献をしたのは、主人公のおばあさんである。茶道の先生をしているのであるが、ちゃきちゃきしているところや、孫である主人公に深い愛情を注いでいるのが手に取るようにわかる。
 
このおばあちゃんが、黒猫に例えられる女性を茶道教室に通うように誘ったのである。茶道の筋がよさそうだ、というようなことを言っていたけれども、きっと孫と女性が結婚したら良い家庭を気づけると読んでのことだったのでは、と思った。読みが当たって二人の幸せな姿を見られたおばあさんにも、よかったですね、と思った。
 
(40代女性)

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