読書感想文「いまさら翼といわれても(米澤穂信)」

古典部シリーズ最新作ということで、文庫になるまで待とうと思ったのだが気になりすぎてハードカバーでも購入を決めた。主人公とその仲間が色々な不思議を紐解いていく話でアニメにもなり私はその小説が好きになった。今回のタイトルはいまさら翼といわれてもだが、それは本編の最後の章にあたる。これは千反田えるが合唱コンクールを前に消えてしまう話だった。

どんな物語なのか、読むまでは分からなかったが主人公の折木が千反田を探すことで不思議を紐解いていくうちになんとなくそういうイメージが湧いてきた。私も自由というものにとても憧れを抱くことがあった。子供ながらに、大人に憧れその自由を手に入れることがどれほど羨ましかったことかと思う。

子供ではまだ親の支配下にいるため、それが叶うことがないのを知っていたからだ。親の言うとおり、親の示した方向へ行くのが正しいものだと感じていた。自分が示すものは、淘汰されるものなのだと。この物語の千反田もまたそのようにして、親の示した道を歩むことを余儀なくされていた。しかし彼女はそれを受け入れていた。進路はその家を継ぐことで、もうすでに自分の進むべき道が決まっていたのだ。

それは揺るぐことなく彼女のしっかりとした信念でもあった。その彼女の強さにとても心ひかれる自分がいた。こんな風に自分は何かを成し遂げようとしたことがかつてあっただろうか?彼女を見、物語を読み進めていくうちに自分の小ささや無力さを実感した。彼女の飽くなき探求心もまた、純粋さがあって良いと感じたのだが。

しかしこの物語は彼女のそれを打ち砕くものでもあった。彼女の将来は決まっていた。それは約束されたものだった。しかし突然、親からそれを打ち砕かれたのだ。自由に生きなさないと。今までずっと縛られていた人間が突如として枷を失ったのだ。どうして良いのか、わかるはずもない。自分がいざ同じ状況に立たされたらどう思うのか、考えさせられる物語だった。とても面白かった。

 

(20代女性)

 

 

 

ブログをメールで購読

メールアドレスを記入して購読すれば、更新をメールで受信できます。

 

 

 

米澤穂信作品の読書感想文はこちら

コメントを残す

シェアする